研究課題/領域番号 |
20K15607
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30756599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 空間計量経済モデル / 機械学習 / リモートセンシング / GIS / GPS / 酪農業 / 草地管理 |
研究実績の概要 |
酪農業において,効率的な生乳生産や安定的な生産体系の確立は喫緊の課題であり,その中で低コストな自給飼料の生産・利用が期待されている.本研究の目的は,日本の主要な生乳生産地の一つである北海道根釧地域を対象に,飼料農地の植生・収量マップを酪農経営の家計調査データと統合し,輪作・草地更新を含めた自給飼料生産の最適な農地管理を酪農経営に基づいて求めることである.牧草地の草種や雑草をハイパースペクトル画像・衛星画像を組み合わせた機械学習で判別し,草地更新や輪作管理による収量や飼料品質への効果の時系列変化を明らかにし,圃場単位の収量と酪農経営の個票調査を合わせ,農地利用と酪農経営効率性を規模ごとの推定,および,各規模で生産性向上に最適な輪作・作付け体系を検討する. 令和2年度の研究においては,地域の農業支援組織や混合飼料生産組織の協力の下,専門スタッフによる牧草地の正確な植生調査のデータ取得と,ハイパースペクトルカメラで各草種・時期の詳細な分光反射特性の取得を行うことができた.得られたデータを機械学習にて解析した結果,ハイパースペクトルデータを用いることによって,97%以上の高い精度の分類が行えることが明らかになった.今後は,この特徴量から重要な波長帯と季節を明らかにし,衛星画像データを用いても判別しやすくすることを目指す. また一方で,酪農家の家計ベースの経営経済データを,同様に地域の農業支援組織の協力の下で取得することができた.現在画像解析と並行して経営データの経済分析・統計分析を進め,基礎統計をまとめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究は新型コロナウィルスが広まった影響で研究代表者が頻繁に現地調査を行うことは極めて困難であった.しかしながら,農業支援組織や混合飼料生産組織の協力により,インターネットを通じて意見交換をしながら現地の牧草地の植生調査データや,ハイパースペクトルカメラでの各草種・時期の詳細な分光反射特性の取得を行うことができた. 得られたデータを解析した.また,酪農家の家計ベースの経営データを,農業支援組織の協力の下で取得することができた.この際にも,インターネット通話を通じて感染のリスクを最小限に留めつつ調査内容を確認した.経営データの分析が牧草地の情報の解析と並行して経済分析を進められており,概ね当初の計画の通り順調に研究が進められている.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も引き続きコロナ下で直接頻繁に現地調査を行うことは困難となることが予想される.そこで,インターネットミーティングでより緊密に連携を取るとともに,画像解析や統計分析,取得したデータの経営分析,また,経済モデルの検討に多くのエフォートを割くことを計画している. 幸い,昨年度のように調査票調査が現地スタッフによって遂行できる場合,本年度の現地調査が必要な作業は植生の観察等,人との接触が少なくコロナ感染のリスクが低い作業である.令和3年度には経済モデルの検討に加え,これらの作業を積極的に進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の研究は新型コロナウィルスが広まった影響で研究代表者が頻繁に現地調査を行うことは極めて困難となった.この理由から,旅費に相当する多くの額を次年度以降に繰り越すこととし,現地スタッフに牧草地の植生調査データ収集や個票データの取得を可能な限り依頼し,研究代表はそこで得られた分光反射特性や家計データの分析に注力した.
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