酪農業において自給率を高め、安定的な食料生産を行うには、牧草を植え替える草地更新や輪作など、飼料農地の適切な管理が欠かせないと言われている。しかしながら、農家経営統計と、農地管理や保有のうちの植生に関するデータの結合は必ずしも行われておらず、農地への投資がどのような植生の変化を経て農家経営に影響を与えるのかは明らかではなかった。そこで本研究では、農業支援組織である地域の農業組合やTMRセンター(混合飼料生産組織)の助力を得て、牧草の管理や収穫作業をGPSで記録し、植生調査に立ち会い植生の情報を取得し、衛星画像やドローンによる画像情報を取得し、それらを農業経営統計を結びつけ、多層の耕地データの整備と、その経済分析を行った。 植生調査では、併せてハイパースペクトルカメラによる分光反射特性の取得、ドローンによる画像撮影を行い、チモシーやクローバーと、シバムギやメドウフォックステイルなどの雑草等の機械学習による識別を行った。その結果、圃場全体の植生について、97%の高い精度で植生が良好とされた圃場を識別できた。また、TMRセンターの作業機械のGPS履歴を確認し、どのような作業機械の適切な配備による作業効率最適化のシミュレーションを行った結果、作業時間を2割程度減らすことができる可能性が示されたほか、圃場の集約によって、さらに大幅に作業時間を節約しうることを数値的に示した。最終的にアンケート調査を実施し、酪農家の費用や作業時間の生産効率性を分析したところ、現時点において、TMRセンターの利用は内生的であり、TMRセンターの活用が直ちに効率性に明確に正負の影響を与えるわけではないことが示唆されている。
|