わが国の食品廃棄物量は大量であり,2019年度の推計では,流通段階(製造業者,卸売業者,小売業者,外食産業)で1756万トン,消費者段階で754万トン,合計年間2510万トン発生している.そのうち,食べられるにも関わらず廃棄される食品ロスの量は,流通段階,消費者を合わせて 570 万トン(2019年度)とされており,特にこの食品ロスを低減化することは重要である.食品ロスの発生要因の1つとして日本の食品流通業界には1/3ルールという商習慣がある.このルールのために,流通過程で食品が過剰に廃棄されていると指摘されている.そこで,本研究では,シリアスゲームを用いて,商習慣によって定められる納品期限や販売期限とプレイヤーの意思決定の関係,さらにその廃棄への影響について検討している.本研究はStep1~Step3で構成されており,今年度は,昨年のテストプレイの結果を考慮しながら,サプライチェーンの運用に携わる人の意思決定の特徴を明らかにするために,商習慣の異なる条件下で,様々なバックグラウンドの被験者をプレイヤーとしてゲームを実施した.その結果,いくつかの特徴が見つかった.例えば,1/3ルール,1/2ルール下では,メーカー,小売業,それぞれに納品期限,販売期限が設けられているため,プレイヤーはそれらの期限に基づいて販売価格の調整を行いやすい.一方で,ルール無しでは,基準となる納品期限や販売期限が設けられていないため,在庫内に賞味期限の異なる牛乳が混在していても,販売価格の調整に苦慮している傾向がみられた.今後は,今回得られた意思決定の特徴(在庫管理,価格調整等)をコンピュータシミュレーションに盛り込む.そして,前年にアンケート調査から消費者をセグメントした結果を基にさらにシミュレーションを行い,持続可能なフードサプライチェーンのための商習慣の検討を行う.
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