研究課題/領域番号 |
20K15619
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
清水 ゆかり 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 主任研究員 (20807292)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 耕畜連携 / 都府県型酪農 / 水田飼料作コントラクター / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
畜産農家から自給飼料生産のための作業を受託する外部組織としてのコントラクターの数は、都府県においても増加傾向にある。設立された組織が持続的に発展するには、適切な設備投資と機械の効率的な利用が不可欠である。飼料生産の現場に対して、想定される稼働面積に応じ、経済性を踏まえた最適な機械装備の組み合わせが提示される必要がある。 そこで21年度は、混合整数非線形計画法によるコントラクター経営計画モデルを構築し、飼料生産コントラクターにおける対象作物・事業規模に応じた最適な機械装備選択を提示した。 シミュレーションの前提として、機械体系はフォレージハーベスタと大型トラクタ、圧縮梱包・ラッピングマシンを組み合わせた大型体系が2種類(①195ps・4条刈、②125ps・3条刈)、③汎用型飼料収穫機及び自走式ラッピングマシンを組み合わせた汎用体系が1種類とした。稼働面積はトウモロコシ15haと稲WCS15haの合計30haから開始し、以後各作物を5haずつ増加させ、合計230haまでとした。試算の結果、稼働面積30~50haでは汎用型飼料収穫機体系(費用32,094~25,522円/10a)、60~110haではフォレージハーベスタと大型トラクタ等を組み合わせる体系(費用28,393~20,305円/10a)が最適であった。 その他、21年度は研究対象を茨城県南地域の水田作経営とし、飼料米生産を含む大規模水田作経営の生産・作業構造について現地調査を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水田飼料作コントラクターは地域における耕畜連携のハブであり、その安定的運営には対象作物の種類や稼働面積・作業効率等を考慮した作業・機械体系の選択が収益性の観点から重要となる。そのため、前年度の成果を発展させ、今年度は混合整数非線形計画法によるコントラクター経営計画モデルを構築し、飼料生産コントラクターが対象とする作物・作業面積に応じた最適な機械装備の選択を具体的に提示した。この研究成果は、清水ゆかり他(2021)「飼料生産コントラクターにおける対象作物・事業規模に応じた機械装備選択に関する考察―混合整数非線形計画法によるコントラクター経営計画モデルの構築とシミュレーション―」『農業経済研究』93(1)、29-34頁として公表した。 なお、当初の計画では耕畜連携の持続的運営に成功している地域・事例を対象として、現地調査により関係組織の取引条件や流通構造等を明らかにする予定であった。しかし、新型コロナウィルスの拡大により対面調査や地域間移動が大幅に制限されるとともに、21年度は所属研究機関の組織改編に伴う研究代表者の所属変更があり、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。そのため、2021年度は研究対象を茨城県県南地域における飼料米生産を含む大規模水田経営に変更し、調査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
茨城県県南地域の大規模水田作経営を対象として、飼料米を含む水稲の生産構造や生産組織のあり方を調査する。茨城県を中心とした関東地方において、耕畜連携の持続的運営に成功している地域・事例を選定し、対象事例における連携組織の関係や、飼料・堆肥・労働力・費用等の流通構造と取引条件等を明らかにするとともに、1970年代以降から現在までの自給飼料生産・耕畜連携に関連する国内政策、生産技術開発、輸入飼料価格等の外部環境について整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国を対象とする複数回の経営体調査を計画していたが、新型コロナウィルスの拡大により、ほとんど実施できず、所属機関が立地する茨城県内の調査に限定された。加えて、所属機関の組織改編に伴う研究代表者の所属変更があり、当初計画の大幅な変更を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。 次年度は、茨城県を中心とした関東地方に調査対象を選定し、飼料用米を生産作物に含む大規模水田稲作経営における生産構造と飼料作物の流通構造等、耕畜連携に関する調査を複数回実施するための旅費のほか、調査分析を取りまとめた結果の学会報告や論文投稿に使用する計画である。また、資料収集及びデータ解析のための人件費として使用する。
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