研究課題/領域番号 |
20K15619
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
清水 ゆかり 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 主任研究員 (20807292)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 耕畜連携 / 都府県型酪農 / 水田飼料作コントラクター / 持続可能性 / 水田活用 / 自給飼料生産 / コントラクター / 組織間連携 |
研究実績の概要 |
茨城県県南地域の大規模水田作経営を対象として、飼料米を含む水稲の生産構造や生産組織のあり方を調査した。調査対象とした経営は、いずれも2022年度に経営規模が100haを超えており、水稲作付面積の4~5割に飼料米を作付けていた。これは、急速な大規模化に対し、作付品種を多様化して農繁期のピークをずらすこと、社会情勢により需要が減った主食用米の売り上げを補填するためである。飼料用米の販売先としては農協や卸売業者であった。大規模化に伴って収穫後に大量に発生する籾殻の処分が問題となっており、畜産経営に敷材として提供するかわりに、圃場に投入する堆肥を入手したり、圃場にそのまま投入するなど模索が見られたが、根本的な解決は難しいようである。対象とした経営では、以前はWCS用稲を生産し酪農経営と耕畜連携関係を結んでいたが、大規模化に伴って品種・栽培方法のスリム化を図り、WCS用稲の栽培を取りやめたため、現在は耕畜連携を行っていない。当該経営2事例については、2019~2021年の3年間の経営実態を分析し、飼料米を含む作付品種・栽培方法や作業構造等について検討し、論文に取りまとめた。 その他、茨城県筑西市、千葉県成田市において子実トウモロコシ栽培に取り組む水田作経営体を対象に調査を実施した。聞き取り調査によれば、対象経営では子実トウモロコシについて、労働コストの低減や土壌の物理性改善等の点から、転作作物として重視している。ウクライナ情勢により自給飼料の需要が高まり、飼料会社からの作付要請は大きく、高い取引価格を示されている。現在の販売先は有機野菜宅配会社と取引のある関東近辺の採卵鶏経営や養豚経営が主で、大手飼料会社から求められるロットに対応するためには、安定的に生産するための栽培技術の開発と、地域の経営体の組織化による栽培面積の確保が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では耕畜連携の持続的運営に成功している地域・事例を対象として、現地調査により関係組織の取引条件や流通構造等を明らかにする予定であった。しかし、新型コロナウィルスの拡大により対面調査や地域間移動が大幅に制限されるとともに、21年度に所属研究機関の組織改編に伴う研究代表者の所属変更があり、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。そのため、2022年度は研究対象を茨城県を中心とした関東の水田作経営に変更し、飼料米や子実トウモロコシ生産に係る状況について調査した。このうち、茨城県南地域では、畜産経営と水田作経営をつなぐコントラクターがなく、耕畜連携の取り組みはされていなかった。しかし、大規模水田作経営では、大規模化による籾殻の処分コストや肥料費の増加などの問題が発生しており、それを解消するために畜産経営と耕畜連携した場合には、両者にとって大きなメリットがあると考えられる。 一方その間、ロシア・ウクライナ戦争による資材価格の高騰により、日本国内における自給飼料に対する需要が高まり、政策による支援のほか、各地で子実トウモロコシ等の自給飼料生産増加へ向けた取り組みが活発化している。その中で、新潟県新発田市において新たにコントラクターが組織されている。2020年、2021年に検討した酪農経営や飼料会社が中心となった大規模なコントラクターとは異なり、この組織は水田作を経営する集落営農と酪農経営により、輸入飼料高騰への対応として発足したものである。203年度は研究対象に新潟県新発田市のコントラクターを加え、調査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
茨城県南地域の大規模水田作経営及び新潟県新発田市のコントラクター組織を対象として、WCS用稲や飼料米、子実トウモロコシ等の自給飼料の生産構造や生産組織のあり方を調査する。コントラクターの経営内容、組織に参加する水田作経営と酪農経営の取引条件、コントラクター運営を支援する関連諸組織の役割、コントラクターの成立条件と今後解決すべき問題点等について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国を対象とする複数回の経営体調査を計画していたが、新型コロナウィルスの拡大により、ほとんど実施できず、所属機関が立地する茨城県内の調査に限定された。加えて、所属機関の組織改編に伴う研究代表者の所属変更があり、当初計画の大幅な変更を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。 次年度は、茨城県を中心とした関東地方に加えて、新潟県のコントラクター組織を研究対象とし、WCS用稲、飼料用米、子実用トウモロコシ等の自給飼料の生産構造と飼料作物の流通構造、コントラクター運営を支援する関連諸組織の役割を明らかにする予定である。耕畜連携に関する調査を複数回実施するための旅費のほか、調査分析を取りまとめた結果の学会報告や論文投稿に使用する計画である。また、資料収集及びデータ解析のための人件費として使用する。
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