研究課題/領域番号 |
20K15626
|
研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷川 雄基 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 講師 (70797092)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 表面含浸材 / 摩耗 / 超音波法 / ビッカース硬度 / サンドブラスト / 溶脱 / 改質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,普通ポルトランドセメント以外のセメントを使用したコンクリートや無機系補修材料に対するけい酸塩系表面含浸材の改質効果の検証を通して,同材料の汎用的な適用可能性を示すことである。前年度までに,けい酸塩系表面含浸材の改質効果を評価するための種々の試験方法について検証するとともに,フライアッシュセメントと高炉セメントに対する改質特性を明らかにした。これらの成果を踏まえ,本年度は,主として農業用水路で普遍的に生じる中性化と摩耗に対する抵抗性試験について検討を進めた。 本研究では,中性化と摩耗に対する含浸材の改質効果を検証するにあたり,一般的な炭酸化による中性化ではなく,水路の水中部で生じるカルシウム溶脱による中性化を対象とした。なぜなら,炭酸化が進んだコンクリートにおける含浸材の改質特性については一部で先行研究が存在するものの,水路で生じる溶脱による中性化と摩耗の複合劣化に対する含浸材の改質効果については,現状ではほとんど知見がないためである。 本年度の成果として,溶脱が生じたモルタルにおいても含浸材の改質効果は発揮され,摩耗抵抗性は改善されることが確認できた。しかしながら,溶脱供試体においては,無溶脱供試体と比較すると,含浸材により得られる摩耗抵抗性の向上効果は小さくなることが確認された。また,含浸材の塗布量が同一である場合,溶脱の進行度合いによって,改質効果が適切に発揮される場合と効果が発揮されにくい場合があることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初はポリマーセメントモルタルを対象とした検討に着手する計画であり,現時点で含浸材の改質効果を評価するための手法として最も精度が高いと考えられるビッカース硬さ試験を適用して検討を進める予定であった。しかしながら,研究代表者の所属機関で使用していたビッカース硬さ試験機が,経年故障により使用ができなくなるという事態に直面した。そこで,前年度までの検討で,ビッカース硬さ試験と結果の親和性が高い超音波法に着目して検討を進めるとともに,方針を転換し,農業用水路で普遍的に生じる摩耗と中性化に対する抵抗性試験について,先に検証することとした。 不測の事態に直面しながらも,摩耗と溶脱に対する含浸材の改質効果について検討を進めることができ,有意義な成果を得られた。一方,積み残しとなってしまったポリマーセメントモルタルを対象とした検討については,当初計画から1年間の延長をし,次年度を最終年度として取り組む計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は,ポリマーセメントモルタルを対象とした検討を進める予定である。具体的には,添加ポリマーの種類や繊維混入の有無を調整したポリマーセメントモルタルを使用して実験を進める。実験水準として,ポリマーを3種類(アクリル系,SBR系,酢酸ビニル系),ポリマーセメント比3水準(P/C=0,5,10%),繊維種類2水準(アラミド系,ビニロン系),繊維の体積混入率3水準(0,0.5,1.0%)を設定する。試験方法としては,含浸材の反応性を確認するための反応性試験および改質効果を確認するための超音波法を主軸とした検討を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では本年度に予定していた実験について,研究代表者の所属機関で所有する実験機器(ビッカース硬さ試験機)を使用する予定であった。しかしながら,同機器が経年故障により使用不可となってしまい,研究計画の大きな変更を余儀なくされた。その事態を受け,本年度は計画の見直しを迫られ,いくつかの要素実験は進められたものの,当初の予算使用計画には見直しが生じることとなった。次年度は,今年度の検討を踏まえ,積み残しとなった課題に着手する予定である。それに付随して,種々の材料費やデータ整理用PC,学会発表旅費等を使用計画として見込んでいる。
|