今年度は、昨年度までに得られた結果を元に、アカジソの株あたりのロズマリン酸(RA)含有量が最も高くなる照射条件の検討を行った。上方からのUV-B照射では上位の2節の葉のRA濃度が無照射に比べ約2.5倍となり、3節目以降の葉には効果が少ないことが明らかになっている。各節から出葉した葉の大きさが変わらないと仮定し試算すると、葉が3節の植物体の株あたりのRA含有量は無照射の2倍となる。実際にUV-B照射を葉が4節ある植物体(ただし、試算の仮定と異なり、葉の大きさは下位の葉で小さい)に対して行ったところ、照射を行った植物体のRA含有量は無照射の2倍以上になった。他方、試算では節数が増加するに従いその倍率は減少し、6節ある植物体では1.5倍まで低下してしまう。しかし、令和3年度の成果より、葉の裏側からUV-B照射を行っても、表側から照射するのと同様のRAの増加効果が確認されているため、上方からの照射と共に下方からの照射を行うことで、6節の葉を持つ葉面積指数の高い植物体でも2倍近いRA含有量になると試算された。実際の栽培においては、UV-B照射の有無によらず、節数の多い植物体の下位の葉は老化して商品価値を失うので、栽培条件にもよるが、6節以上の節数を持つ植物体での照射条件の確立の必要性は低いと考えられる。以上より、UV-B照射を植物体の上部、下部から行うことによって植物体あたりのRA含有量を葉面積指数の高い群落でも2倍ほどに高めることができることが示された。これに加えて、令和4年度に行った分散照射技術の確立ができれば、植物体あたりのRA含有量はより大となることが予想されるが、分散照射による未熟葉のUV-B照射への順化と考えられるRA濃度の増加効果の打ち消しについては、そのメカニズムも含め未解明であり、今後の研究を通して照射条件の確立が求められる。
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