研究課題/領域番号 |
20K15628
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 助教 (00723115)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 異物検査 / サブテラヘルツ波 / ミリ波 / 透過強度分布 / 散乱 / 粉末食品 |
研究実績の概要 |
本研究は、サブテラヘルツ波(ミリ波)が粉末食品において吸収や散乱による減衰が少ない性質、および可干渉(コヒーレント)性のある電磁波により異物で波面が歪められ電界強度分布が変化する現象を利用して、パセリに混入した微小な異物を非接触かつ迅速に検出できるシステムの開発を目指すものである。そこで2020年度は、検体の搬送系と検出器を組み合わせたイメージング系の構築を行い、異物検出能の評価を行った。 初めに100 GHz(波長3 mm)のIMPATTダイオード発振器から下方の試料へ照射し、試料をリニアスライダで繰り返し往復させながら、ショットキーバリアダイオード(SBD)検出器を掃引することでデータ取得するシステムを構築した。電圧値から2次元画像を構築し、水平面上での強度分布を取得したところ、照射波が異物周辺で回折して生じる輪状の模様が確認できた。異物による画像の歪みを定量的に評価したところ、異物が大きくなるほど画像の歪み量も増加する傾向が得られ、波長よりも小さい1~2 mmの異物も有意に検出できる可能性が示唆された。 次に、ラインセンサ(カメラ)を導入して前述の発振器と共にベルト搬送系へ組み込み、ベルト搬送された試料をベルト直下のラインセンサでリアルタイムに画像取得できる装置を構築した。リアルタイムに画像が得られ、異物周辺に上記と同様の輪状の模様が確認できた。異物の有無によるNMSEを算出したところ、異物の大きさに応じた画像の歪みも定量的に変化することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試料をリニアスライダで反復搬送させながら固定した検出器で定点の透過強度を測定して画像構築する走査型イメージング装置、ならびに試料をベルト搬送してラインセンサ(カメラ)により瞬時に画像化するイメージング装置の2種類を構築でき、微小異物の検出能評価を行うまでに至った。しかし感染症拡大に伴う活動制限の影響により、画像処理方法やハードウェア構成の改良を検討し精度および感度を向上させる当初の計画までは実施できておらず、次年度への繰越課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の成果では、ゴムおよび樹脂からなる異物の大きさが1 mmから4 mmと大きくなるほど透過強度分布の歪みも大きくなる傾向が得られたが、パセリの厚みと検出感度との関係性を定量的に検証するに至ってない。そこで次年度では、パセリを均一にならしつつ厚みを系統的に変える機構を構築し、パセリの厚みと検出感度の関係を検証する予定である。また、電磁波の伝搬特性の理解のため、空間的な強度分布を実験および解析により計測し、装置の最適な構成を検証する。さらに、搬送された検体中の異物を高速かつ高精度に判定できるようにすることを目指し、画像取得および画像解析のアルゴリズム検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には、所属の研究室に既有の発振器を用いて装置構築を行い異物検出能の評価をおこなった。本来はさらに、装置構成の改良を検証し最適な発振器を購入する予定であったが、活動制限に伴う計画の遅延が生じたことおよび装置納期に4~5ヶ月ほどを要することから2020年度中の購入に間に合わなかった。次年度は、発振器(100万円近くの予定)の購入計画を繰り越すとともに、検出の高感度化手法の検証を行うためのアンプ等の機器を購入する計画である。 また、感染症拡大による学会発表の相次ぐ中止により成果発表の機会が失われた。次年度には多数の成果発表や情報収集の場が予定されており参加費や出張旅費に使用する計画である。
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