研究課題/領域番号 |
20K15628
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 助教 (00723115)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 異物検査 / サブテラヘルツ波 / ミリ波 / 透過強度分布 / 散乱 / 粉末食品 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に構築したベルトコンベヤおよび光源+ラインセンサからなるイメージング系を組み合わせた検査装置を用い、ベルト上へ直接粉末食品の供給を行って、現場におけるライン検査に近い検証を行った。ベルトコンベヤの速度を食品工場現場における実際のライン速度を考慮して55-145 mm/sで駆動し、ホッパーからパセリを安定的に供給できることを確認できた。しかし、供給試料厚の不均一さが取得画像に背景ノイズとなって現れたため、ホッパー直後に均し板を設置して高さを調整できる機構を構築し、厚み4mmを下限として可変で均平な食品供給を実現させた。続いて、実際にベルト上にゴム、樹脂(PTFE)を固定し、その上部に厚み条件が4~12 mmとなるようにパセリで覆い隠した状態で撮像した。前年までのモデル実験と同様に、異物がある位置にいずれも円形の回折模様が確認され、画像変化の程度を統計的に解析したところ、ゴムと樹脂のいずれも波長サイズ以下である2 mmの異物を検出することができ、最低限の企業ニーズは上回る成果を得ることができた。また、5~10 mm程度のハエトリグモおよびコガネムシをさせた場合にも同様に検出ができ、混入した昆虫の検出にも応用が期待される。 また、その他の粉末食品への応用を検証した結果、乾燥野菜のように粒径が大きなものは、計測領域内の密度ばらつきにより取得画像の背景ノイズが増大し、異物検出を困難にした。一方、調味料として広く用いられる粒径の小さな顆粒状および粉末状の各種食品については良好な画像が得られ、パセリと同様に1-2 mm以上の異物を検出できる結果となった。また、取得画像から異物による回折模様を選択的に検出できるハフ変換のプログラムをPythonにより作成し、パラメータを最適化することでゴム:1mm、樹脂:2mm以上の異物を誤検出なく検出できることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに、ベルト搬送した試料に対しIMPATT光源およびラインセンサ(カメラ)によりリアルタイムに画像化するイメージングシステムを構築し、画像処理方法やハードウェア構成の改良をおこなった。一方で本年度には、実際にホッパーからの粉末食品の供給を行ったところ均し機構により撮像面の均平化を要することが明らかとなり、追加検証を行う必要が生じた。均し機構の最適化の結果、取得データが向上し模擬試料(平坦なアクリル容器)を用いた場合に近い検出能を得ることができた。また、「強度変調」による高感度化を試みたものの、結果の向上は認められなかった。より難易度の高い検出を試みるために別光源およびロックインアンプを用いた検証を予定しているものの、世界的な半導体不足の状況および仕様変更の必要が生じたことから装置の納入が間に合わず、次年度への繰越課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、粉末食品の対象としてパセリに加え各種調味料および乾燥野菜の計測を試みた。その結果、粒径の小さい粉末ほど、異物の検出が容易になる可能性が示唆された。重要なターゲットとなり得る小麦粉については試料調達の都合から検証が行えなかったため、2023年度に検証を進める予定である。 また、より微小なサイズの異物の高感度検出を目指し、偏光を利用した検出手法について検証する。本研究で用いている発振器ならびに検出器は偏光依存性があることを利用し、異物により生じる偏光特性の歪みを変調技術により高感度に検出することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度には、実際にホッパーからの粉末食品の供給を行ったところ均し機構により撮像面の均平化を要することが明らかとなり、改良のための追加検証を行う必要が生じ、その後の検証が遅れる結果となった。また、「強度変調」による高感度化を試みたものの、結果の向上は認められず、より難易度の高い検出を目指し「偏光情報の変調を組み合わせることによる微小な異物検出の高感度化」を試みるために別光源およびロックインアンプを用いた検証を予定しているものの、世界的な半導体不足の状況および仕様変更の必要が生じたことから装置の納入が間に合わず、次年度への繰越課題となった。次年度は、上記課題に取り組むにあたり、変調や制御に必要な各種機器、安定した計測のために遮蔽された計測システム内部のモニタリング用撮影機器、および当計測システム周辺の備品の購入を行う予定である。また成果発表として、農業工学・計測系の学会誌への投稿にかかる論文掲載料、関西・関東にある計測機器メーカおよび食品メーカ、共同研究先大学(京都大学)等への出張旅費等への使用を予定している。
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