本研究ではサブテラヘルツ波(ミリ波)とそのデバイスの特徴を活かし、粉末食品のベルト搬送系および光源とラインセンサによる撮像系を組み合わせたライン検査システムを構築し、異物検出能の評価を行うことを目的とし、下記の検査システムの試験機を構築した。100 GHz(波長3 mm)のIMPATTダイオード光源、プラスチック製ベルト、ラインセンサ(カメラ)を設置して撮像系とした。パセリ供給を行えるホッパーおよび均し板を設置し、厚み4mmを下限として可変で均平な食品供給を実現させた。ベルトコンベヤの速度を食品工場現場における実際のライン速度を考慮して55-145 mm/sでモーター駆動し、パセリを安定的に供給しながら透過画像を取得できることを確認した。 最終年度には報告者の異動によるシステム移設に伴い、画像を再度取得したところ、同様の画像は得られるものの、ハフ変換による同心円模様(異物周囲での回折により生じる模様)の検出精度が前年より低下し、解析のロバスト性が課題となった。照射光の1kHz変調およびロックインアンプ等による高感度検出も検証したものの、課題である背景ノイズの低減および異物検出能の向上には至らなかった。これはランダムな背景ノイズが要因であり、混在する異物由来の回折模様を特異的かつ即時的に検出するロバストな判定モデルが求められる。そこでニューラルネットワークによる機械学習を活用し判定を行ったところ、学習用50画像、検証用20画像で得たモデルから正解率85%、適合率(異物判定が正しかった割合)92%,再現率(検出された異物の割合)78%が示され、効果的な結果が得られた。研究期間全体を通して、検査システムの試験機を構築し原理検証および学習モデルの適用により2 mm以上のサイズの異物の有無を有意に見分けることができる成果が得られ、実用化に向けた実証への進展が期待される。
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