研究課題/領域番号 |
20K15630
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
村上 貴一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 研究員 (50813903)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光質 / 光受容体 / 光形態形成 / phytochrome / 積雪 |
研究実績の概要 |
本研究では、積雪を透過した光の分光特性が雪下越冬植物の融雪後の初期生育と越冬性に影響を及ぼすという仮説を検証することが主目的である。2020年度は (1) 積雪の分光特性の評価、および (2) 雪上電照処理による雪下光質の制御が越冬後コムギの初期生育に及ぼす影響に関する解析を行った。 (1) に関して、12月から3月にかけて札幌市内にて積雪を採取し、雪密度と雪質が分光透過特性に及ぼす影響を調査した。圧密時の雪質変化により積雪内での光路長の変化が生じるため、分光透過率を積雪密度のみから推定することは難しいことが明らかとなった。一方で、本研究で光受容体phytochromeを介して積雪下の植物に作用すると作業仮説を立てた、積雪透過光の赤色光 / 遠赤色光の比は、雪質および密度により大きく変化しないことを確認した。 (2) に関して、積雪透過光の分光特性影響の調査のための圃場での栽培実験を実施した。当初の予定では秋まきコムギを対象としていたが、光質影響をより明瞭に確認するために初冬まきコムギに対象を変更し、雪上からの電照により積雪下光環境を制御する実験系を構築した。積雪深30 cm 以下の場合に赤色および遠赤色LEDによる電照処理を行うことで、積雪下植物のphytochrome応答を誘導することを試みた。3月下旬の融雪以降、越冬率および地上部体サイズの計測と生長解析を進めている (2021年5月現在)。 これらの実験的な研究と平行し、光計測の適切な時間分解能を決定するために光合成モデルを用いたシミュレーションを実施し、個体生長の議論のためには少なくとも1分の時間分解能での光計測・記録が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、次年度以降の研究を進めるための基礎的なデータを収集した。新型コロナウイルス対応の一環として当初の予定を一部変更し、室内実験系構築を延期し、屋外実験を優先して進めた。
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今後の研究の推進方策 |
越冬後初期生育の調査を進め、データを解析する。また、新型コロナウイルスへの対応により変更を余儀なくされた室内実験系の構築を進め、人工気象室内で越冬時の光質が脱順化後の初期生育に及ぼす影響を調査する。具体的には、所属機構現有設備の低温実験施設内に人工光植物栽培設備を設置し、積雪下を模した低温処理を行い、順化・脱順化時の照射光光質がコムギの脱順化の初期生育に及ぼす影響を評価する。適切な順化・脱順化期間の設定から実験をはじめ、十分な反復実験を行う。室内実験と並行して圃場での電照実験を再実施し、再現性を確認する。
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