設定した周波数およびデューティ比の矩形パルス光下のクロロフィル蛍光強度の時間変化を測定できるシステムを、バイポーラ電源および市販のクロロフィル蛍光測定装置(MINI-PAM II)を用いて構築した。当該システムを用いてキュウリ葉に対して0.1,0.5または1.0 HzでDuty比50%の矩形パルス光を照射した際のクロロフィル蛍光強度時間変化を測定した。結果、蛍光強度の立ち上がりと立ち下がりに時間遅れがあること、周波数が高いほど蛍光強度の最低値が高いことなどが明らかになった。パルス光下で光合成中間代謝産物の生産速度、蓄積量が時間変化していることを支持する結果である。本研究の目的である動的モデル作成に必要なデータの一部を取得できている。得られたクロロフィル蛍光強度時間変化は、光合成中間代謝産物のプール1つを仮定した一次遅れのカーブとならず、2つ以上のプールを想定する必要性が示された。また、0.1 Hzのパルス光下では5 sの明期の後半にクロロフィル蛍光強度が低下しており、クロロフィル蛍光強度が単に光合成中間代謝産物の蓄積量によって決定するのではなく、数秒の明期の間に光合成以外へのエネルギー消費(非光化学的消光;NPQ)が誘導されることをモデル化する必要性が示された。 次年度は栽培時の環境により、光合成特性の異なるキュウリ葉から得られたクロロフィル蛍光強度時間変化パターンに対して、複数のモデル候補をフィッティングさせることで、最も妥当なモデルを策定する。
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