研究課題/領域番号 |
20K15639
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
山崎 由理 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (00826696)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 林間放牧 / 生態系サービス / NDVI / 植生調査 / 土壌分析 |
研究実績の概要 |
この研究では、林間放牧による生態系サービスの定量的評価および生態系サービスのシナジートレードオフの関係を明らかにすることを目的とする。 2021年度は、肉牛の放牧による放牧地の植生および土壌への影響を調査した。2021年7月上旬に、放牧地において植生調査およびかく乱土壌の採取を行った。 まず、放牧地内の植被率は50~85%と区画によってばらつきがみられた。とくに、植被率が50%と低かった区画は、牧草以外の雑草の侵入や植生の立ち枯れが特徴的であった。この区画は、農家への聞き取り調査から、水辺地および他の放牧地への移動経路から離れた位置にあり、放牧牛の利用頻度が低いことがわかった。 また、土壌分析の結果から、いずれの区画も土壌pHは6.0~7.0と適正値であったが、土壌ECは半数以上の区画で0.50 mS/mを示し、一般的な草地のEC値である1.0 mS/mよりも低い傾向にあることがわかった。さらに、市販のATP計測キットを用いた土壌の簡易ATP測定では、放牧牛の利用頻度が比較的高い区画の方がATPは高い結果を示しており、たい肥などの有機物の施用により増加するATPの特性と合致していた。また土壌のC/N比はすべての区画で20以下であったことから、放牧牛の糞尿は適切に分解されていると判断できる。 衛星画像(Sentinel2)を用いて、2021年5月~10月における放牧地のNDVIの推移を解析した。2021年7月の降水量は平年値の半分程度と少なく、NDVIが0.4~0.5と植生の生育初期の5月程度まで低下したものの、8月以降は人為的管理が行われている採草地と同程度のNDVI(0.5~0.7)まで回復した。このことから、放牧地の植生は人為的管理が行われている採草地よりも降水量の影響を受けやすいが、その影響が短期間(およそ1か月)であれば回復できる地力を有していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の感染対策に伴い、対象地域への調査回数が限定され、現地調査が十分に実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、現地調査の回数を増やし、前年度は1回しか実施できなかった植生調査および土壌調査を再度検討する。また、ドローンを用いた画像解析のほかセンサーカメラによる放牧牛および野生動物の行動調査についても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に申請した予算は北海道様似町における現地調査にかかる旅費として使用する予定であったが、新型コロナウィルス感染防止対策に伴い現地調査の回数が減ったために次年度に一部繰り越しを行った。 繰り越し分は、2022年度の現地調査にかかる旅費および計測機器の修理交換にかかる費用として使用する。
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