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2020 年度 実施状況報告書

生物間相互作用強度の変化が媒介する農薬リスク評価に向けた基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K15640
研究機関国立研究開発法人国立環境研究所

研究代表者

橋本 洸哉  国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (90832436)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード農薬の生態影響評価 / 生物間相互作用 / 人工生態系 / 非線形時系列解析(EDM) / 水田生態系
研究実績の概要

本研究では、農薬が生物多様性に与える影響の予測精度を、相互作用強度の変化を考慮することによって高めることを目的とする。そのために、以下の項目の研究を行うことを予定している。(1)農薬曝露による水田生物間相互作用強度の変化の検出、(2)農薬曝露後の相互作用強度の変化を考慮した農薬の影響予測。このうち、令和2年度の実施項目は(1)である。
当初の計画を変更し、近畿大学ではなく国立環境研の共通圃場に水田を模した人工生態系(メソコズム)を設置し、農薬散布実験を行った。農薬には、ネオニコチノイド系殺虫剤であるクロチアニジンを選定した。実験の結果、少なくとも昆虫類の個体数に関しては、農薬の有無で目立った差が見られなかった。これは、実験系立ち上げの年であり、また実験開始が1か月程度遅れたために、昆虫が少なかったことと関係するかもしれない。
また、並行して、既存の水田メソコズム実験の時系列データを用い、農薬曝露後の水田生物間相互作用強度の変化の検出を試みた。Empirical Dynamic Modelingによる相互作用解析の結果、トンボ科ヤゴや水田雑草、動植物プランクトンを含む水田メソコズム内10生物群間の相互作用ネットワークを再構成することに成功した。例えば、トンボ科ヤゴから貝類への負の影響、植物プランクトン→ワムシ類→甲殻類プランクトンという正の影響の連鎖などが検出された。どの処理区でも、相互作用強度の頻度分布はより弱い側に偏っていた。さらに、無処理区と農薬処理区で相互作用強度を比較したところ、特に殺虫剤(フィプロニル)を散布した処理で無処理区よりもやや相互作用強度が強くなる傾向が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表者の異動により、新たに実験系を設置する必要が生じたため、実験の開始に1か月程遅れが出た。実験開始の遅れを除き、生物のサンプリングは遅延なく終了しているが、採取した動植物プランクトンの同定・計数が終了しておらず、本実験で得られたデータを用いての相互作用解析は未実施の状態である。他方、当初は十分なデータ量でないと思われた既存の水田メソコズム実験のデータを用いた解析から、想定よりも良好な結果が得られている。このことから、農薬曝露による生物間相互作用強度の変化を検証するという目的の達成のため、既存のデータ解析を優先して進めた。こちらの結果に関してはすでに学会大会で発表済みであり、現在論文を投稿予定である。

今後の研究の推進方策

今年度は、昨年度から持ち越しとなったメソコズム実験の生物サンプル分析と相互作用解析から、実施項目(1)農薬による生物間相互作用強度の変化と(2)農薬曝露後の相互作用強度の変化を考慮した農薬の影響予測を合わせて行う予定である。ただし、サンプル分析の進捗状況によっては、(2)についても、代替手段として(1)と同様の既存の水田メソコズム実験のデータを用いた解析を優先して進めることも検討している。具体的には、種数や多様度指数といった群集の多様性パラメータについて、(1)で得られた相互作用強度の結果と合わせて時系列解析を行い、農薬-相互作用強度-生物多様性という3者の変数の関係を明らかにし、農薬が生物多様性に与える影響の予測について、相互作用強度の変化を考慮した予測精度の向上を目指す。また、(1)に関しての論文を速やかに投稿するとともに、(2)についても結果が得られ次第、学会発表を行い、論文を執筆・投稿する。

次年度使用額が生じた理由

実験の規模をやや縮小したことにより、実験調査に係る人件費に余剰が生じたため、未使用額が生じた。この未使用額は、今年度のサンプル分析に係る人件費として充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 農薬施用は水生生物群集の相互作用に影響するか?:非線形時系列解析によるアプローチ2021

    • 著者名/発表者名
      橋本洸哉, 江口優志, 角谷 拓, 早坂大亮
    • 学会等名
      日本生態学会第68回全国大会

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公開日: 2021-12-27  

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