研究実績の概要 |
ROSS系統ブロイラーを3週齢まで飼養し、対照(Control;24℃、湿度55±5%)、熱ストレス(HS;32℃)、熱ストレス条件と同量の飼料を給餌するPair-Fed(PF;24℃)に分け、各条件で5週齢まで14日間の飼養をおこなった。【飼育期間全体を通した飼養成績】Control区が最も増体が大きくなり、HS区・PF区は同程度でControlの8割程度の増体であった。体重あたりの脂肪蓄積量を比較すると、HS区が他の区と比較して最も多くなった。一方、顕著に脂肪蓄積量の低かったPF区では脂肪肝が確認された。【血中代謝物の変動】熱ストレス曝露時の肉用鶏で生体内での脂肪合成が盛んになる時期を明らかにするため、暑熱感作開始から計9点のタイムポイント(0h,12h,24h,3d,5d,7d,9d,11d,14d)において血液を採取し、時間変動の有無を検証した。血中トリグリセリド等、脂質代謝関連因子はどのタイムポイントにおいても突出した変化はなかったが、遊離脂肪酸、総コレステロールはPF区で総じてどのポイントでも他の区と比較し有意に高くなった。【肝臓における変化】肝臓では、HS区・PF区でde novo脂質合成関連遺伝子の発現増加が起きていた。【脂肪組織における変化】興味深いことに、HS区の脂肪組織では他の区と比較してリポタンパク質リパーゼ(LPL)の活性増加が生じていた。また、Control区とHS区を比較したトランスクリプトーム解析によって、HS区の脂肪組織ではトリグリセリド合成系の亢進が起きていることが明らかになった。【総括】以上を考え合わせると、HS区とPF区は栄養摂取量は同じである一方、起きている脂質代謝変化は全く異なることが示された。特に、LPLの活性増加は暑熱負荷特異的に生じる可能性があり、HS区においては脂質を積極的に脂肪組織に取り込むよう働いていると考えられた。
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