昨年度(令和3年度)は、妊娠末期における黒毛和種繁殖メス牛への酪酸ナトリウム給与は、血中グルカゴン様ペプチド1およびグルコース濃度を増加させること、並びに出生した仔牛の新生時(0~4日齢)における血中グルコースおよびインスリン様成長因子1(IGF-1)濃度を増加させることを明らかにした。本年度では、上記の母牛への試験処理が、出生した仔牛の哺育期における発育および血液成分に及ぼす影響を解析した。飼料摂取量および体重は母牛への酪酸ナトリウム給与の影響を受けなかった。また、血漿代謝産物濃度(グルコース、総コレステロール、NEFA)においても処理の影響は認められなかった。一方、30および60日齢における血漿IGF-1濃度は、酪酸ナトリウムを給与した母牛から出生した仔牛において高い値を示した。以上のことから、妊娠末期における黒毛和種繁殖メス牛への酪酸ナトリウム給与による新生仔牛の血漿IGF-1濃度の増加は、哺育期まで持続することを明らかにした。このことは母牛への酪酸製剤給与は育成期以後の仔牛の発育に影響する可能性を示しており、今後のさらなる研究により明らかにする必要がある。
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