研究課題/領域番号 |
20K15650
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
中村 翔 岡山理科大学, 獣医学部, 講師 (50829223)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Tac1 / ロードシス / ゲノム編集 / 発情行動 / 前腹側室周囲核 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Tac1ニューロンを含む神経ネットワークに着目し、雌における発情行動の神経メカニズムを解明することである。 今年度は、昨年度中にゲノム編集により片側アレルのエクソンを欠損したTac1ヘテロノックアウトラットを用いて、Tac1 KOラットの系統化を進めた。交配により作出したTac1 KOラットの脳を採取し、凍結切片を用いたTac1のin situ hybridization及び翻訳産物であるサブスタンスPの免疫組織科学染色を行ったが、いずれにおいても野生型に認められたシグナルはTac1 KOラットでは認められなかった。したがって、本研究で作出したゲノム編集ラットではTac1の遺伝子発現が計画通り欠失していることが確認された。次に、雌のTac1 KOラットの表現型を解析するため、性成熟のタイミングを膣開口を指標に解析したところ野生型と同様のタイミングで性成熟に達した。 今後は、Tac1 KOラットの雌の卵巣除去後に発情前期を模した濃度のエストロジェン負荷して雄と同居させ、ロードシス商を解析し、発情行動におけるTac1の機能を明らかにする計画である。 また、昨年度に引き続き野生型雌ラットの発情行動発現時に活性化する領域を神経細胞の活性化マーカーであるc-Fosの発現を指標に検索したところ、前腹側室周囲核(AVPV)においてc-Fos陽性細胞数が上昇することを発見した。AVPVは排卵中枢として知られている。AVPVにおけるc-Fos陽性細胞はTac1陰性であったが、交尾と発情行動を統合するメカニズム解明に向けて他の候補神経伝達物質との共染色を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集によって作出したTac1遺伝子を欠損したアレルを持つラットから交配によりノックアウトした系統を得ることができた。また、Tac1遺伝子及び翻訳後のサブスタンスPが発現していないことを確認できたため。 また、交尾刺激によって新たに前腹側室周囲核の細胞が活性化することを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、系統化したTac1 KOラットの発情行動(ロードシス)を解析し、Tac1ニューロンの発情行動における機能を明らかにする計画である。KOラットの表現型が顕著でない場合は、発情行動時に活性化する他の候補ニューロンも見出しつつあるため、標的を変更しながら交尾時に活性化する神経ネットワークを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により複数学会の開催が延期あるいはオンラインでの開催に切り替わったため、当初予定していた旅費としての支出がなくなったこと、さらに前年度作出してTac1ヘテロKOラットの交配を進め、KO系統を得ることが今年度の中心的な内容となったため、表現型解析等に使用する試薬などの支出が抑えられたため。次年度は、繰り越した予算を使用して得られたKO系統の表現型解析及び発情行動と関連する新たな標的に関して実験を進める計画である。
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