研究課題/領域番号 |
20K15652
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研究機関 | 独立行政法人家畜改良センター |
研究代表者 |
的場 理子 (的場理子) 独立行政法人家畜改良センター, 本所(企画調整部 技術グループ), 次長・課長 (60592574)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 牛 / 体外受精 / 受精卵 / 胚 / SNP解析 / ゲノミック評価 / 育種改良 |
研究実績の概要 |
現在、牛の育種改良においては、後代への高い遺伝的改良能力を有する種雄牛を選抜して利用する後代検定手法が一般的に用いられているが、この手法は多数の後代が必要となり、本牛の選抜まで5年以上の期間を要し、飼養管理コストも膨大となっている。本研究では育種改良の高速化を目指し、次世代である胚段階でのゲノミック評価を実現するために体外受精胚のSNP解析法の確立を目指す。胚段階でのSNP解析によるゲノミック評価が可能となれば、育種改良の早期化や減少する牛資源の有効活用ならびに候補種雄牛の大幅な絞り込みが期待される。 本年度は、ウシ胚由来細胞からのSNP解析の可能性を検討するため、経腟採卵により採取した卵子を供試して体外受精を実施し、卵割した胚を2等分に分離した割球分離胚の生産を試みた。卵子は成牛である経産牛だけでなく、より改良速度を見込める性成熟前後の時期の子牛からも採取し、体外受精後の割球分離胚の生産性を比較した。成牛と子牛の採取可能サイズの卵胞数は同等であったが、子牛における採取卵子数、高品質卵子率は成牛の半数以下となった。そのため、割球分離に供試可能な胚の生産性は子牛が成牛に比べて低かったが、8日目胚盤胞に発生した分離胚のペア率は成牛および子牛間で差が認められず、高品質の卵子を用いることにより子牛においても移植可能なペアの胚を作出することが可能であることが明らかとなった。SNP解析が可能となるDNA増幅法の検討では、ペアとなる割球分離胚のDNA増幅は可能であったが、胚の形態学的品質や発育段階に一定の傾向が認められずその濃度にはばらつきが生じており更なる検討が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少数細胞の増殖培養に必要となる割球分離では、体外受精胚の発生率が安定している成牛に加え、成牛に比べて発生率が低い性成熟前後の子牛においても割球分離後の培養によるペアの発生率が成牛と同様であることを明らかとしたことにより、片側をSNP解析にもう一方を移植による産子生産を可能とする知見が得られた。SNP解析に耐えうるDNA増幅においては、DNA濃度の課題の解決が必要であるが胚由来細胞からのゲノムDNAの増殖は可能であることが明らかとなった。以上のことから、現在まで研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
割球分離した胚細胞の体外培養により発生した胚盤胞は約半数がペアであり、その成績は成牛と性成熟前後の時期の子牛で同等であったことから、今後は成牛だけでなく子牛においても少数細胞の増殖培養を試みるとともに引き続き最適なDNA調製方法を検討し、SNP解析の精度を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な予算執行した結果、令和2年度の研究費に残額6,387円が発生した。この残額を繰り越すため、次年度の研究費使用額が生じた。残額については次年度の研究計画において適正に使用する。
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