研究課題/領域番号 |
20K15656
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
白水 貴大 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特任研究員 (80804608)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 犬糸状虫 / ネッタイシマカ / ゲノム編集 / ベクターコントロール / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
申請者はネッタイシマカ-犬糸状虫をモデルとした蚊のフィラリア媒介メカニズムの研究において、遺伝的背景の近いLiverpool系統の中で高媒介性・非媒介性と両極端な表現型を示す系統の同定に成功した。さらに、RNA-seq・RNAiスクリーニング解析により、新規自然免疫分子LRIM18の同定に成功した。そこで本研究では、ネッタイシマカ自然免疫分子LRIM18の犬糸状虫感染時の宿主応答に果たす機能を解析することで、蚊のフィラリア媒介メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的とする。まず、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によりLRIM18ノックアウト高媒介性系統を作製し、ノックアウトホモ個体群(KO)と野生型個体群(WT)間における犬糸状虫感染表現型の比較解析を行った。その結果、KOではWTと比べて、感染13日後の頭胸部における感染期幼虫(L3)数の有意な減少がみられた。そこで、感染部位(頭胸部、腹部)、感染時期(感染11, 13日後)に分けて詳細な表現型解析を行った。その結果、KOではWTと比べて、感染11日後から頭胸部L3数の有意な減少がみられ、また、腹部の犬糸状虫感染数の有意な増加がみられた。したがってKOでのL3の頭胸部への移行率(頭胸部L3数/総感染数)はWTと比べて有意に低く、LRIM18-KOによる高媒介性系統の犬糸状虫の発育抑制並びに犬糸状虫媒介能の低下が示唆された。今後は、別のKOホモ個体群についても犬糸状虫感染表現型解析を行い、再現性の確認を行う。また、非媒介性系統についてもLRIM18-KO系統の作製に成功しており、感染表現型解析を進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、犬糸状虫高媒介性系統、非媒介性系統それぞれについてLRIM18ノックアウト(KO)系統の作製に成功した。また、高媒介性系統についてLRIM18-KOホモ個体群の感染表現型解析を行った結果、LRIM18が蚊の犬糸状虫発育抑制、L3の頭胸部への移行抑制等、媒介能に関与する因子の一つである可能性が示唆された。非媒介性系統についても、ホモ個体群の感染表現型解析を進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
LRIM18ノックアウト(KO)高媒介性系統について別のホモ個体群の感染表現型解析による再現性の確認を行う。また作製済みの非媒介性系統におけるLRIM18-KOホモ個体群についても感染表現型解析を行う。さらには、KO系統におけるRNA-seq解析を行い、LRIM18と関連のある遺伝子、シグナル経路を総合的に解析する。以上により、蚊の犬糸状虫媒介メカニズムを分子レベルで明らかにし、犬糸状虫を媒介しない蚊の作出に向けた学術基盤の形成への寄与を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により参加した学会が誌上開催やオンライン開催となったため次年度使用が生じた。実験系維持と表現型解析のため、実験動物および消耗品に使用する計画である。
|