研究課題/領域番号 |
20K15661
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中川 敬介 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (90853250)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 牛コロナウイルス / マウスモデル / 生ワクチン開発 / 下痢症 |
研究実績の概要 |
【背景】 多くのコロナウイルス感染症において、病態再現小動物モデルは確立されていない。よって、種々のコロナウイルスに対する病態再現小動物モデルの確立は長年のコロナウイルス研究における課題の1つとして考えられてきた。すなわち、コロナウイルスの病態再現小動物モデルが確立されたならば、コロナウイルスの病態理解に大きく貢献することが予想される。また、マウスのゲノム編集技術を用いて病態再現マウスを樹立するのではなく、日本で販売されているコンベンショナルマウスを用いてコロナウイルス病態再現マウスを確立できたのなら、汎用性と経済性の面で大きな利点が期待される。本研究では、成牛および幼牛に呼吸器症あるいは下痢症を引き起こす牛コロナウイルスに注目し、本ウイルスと乳飲みマウス(コンベンショナルマウスICR系統、2日齢)を用いて、牛コロナウイルス病態再現マウスモデルの確立を試みた。 【今年度の成果】 2020年に死亡した牛の血便由来である牛コロナウイルスの全塩基配列を解析した論文がMicrobiology Resource Announcementsに受理された。本年度は、本牛より分離した牛コロナウイルス(1.8×10,000 PFU/匹)を2日齢の乳飲みマウス(ICR系統、10匹)に経口投与し、乳飲みマウスが下痢症を引き起こすか否かを検証した。その結果、培養上清を接種した非感染マウス3匹はいずれも症状を示すことはなかった一方、ウイルス接種マウス10匹中3匹が軟便を示し、また10匹中2匹が下痢症を呈した。これらウイルス接種マウスに見られた症状は一過性であった。また、それ以外のウイルス接種マウス5匹は軟便あるいは下痢症といった症状を呈することはなかった。これらの結果は、牛コロナウイルスが引き起こす下痢症を、マウスを用いることで部分的に再現できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生ワクチン開発を目的に、牛コロナウイルスをVero細胞にて連続継代する予定であったが、予想よりも牛コロナウイルスの増殖効率がVero細胞にて低いことがわかった。現在、代替の培養細胞として、HRT-18細胞にて連続継代を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果により牛コロナウイルスをコンベンショナルマウス(ICR系統)に経口投与することで、本ウイルスが引き起こす下痢症を部分的に再現する可能性を示すことができた。一方、ウイルス接種マウスの下痢便中に感染性ウイルスが存在するか否か、下痢症を示したマウスの病理学的解析などについては不明である。これらの点は、下痢便からのウイルス遺伝子の検出、ならびに昨年度に作製した牛コロナウイルスN蛋白質ペプチド抗体を用いることで追究可能と考えている。最終年度は、これらの点に取り組み、世界的にも珍しいコロナウイルスの病態再現マウスモデルの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度はマウスへの接種実験をこれまで以上に実施すると予想される点と、病理解析に用意する研究材料が必要と考えられたため、次年度使用額が生じた。最終年度はこれら使用額を行うべき実験のために有効活用する予定である。
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