牛コロナウイルス(BCoV)は成牛および幼牛に呼吸器症あるいは下痢症を引き起こす。牛以外に本感染症の病態を再現する動物モデルが存在しないため、本ウイルスの病態解析や弱毒生ワクチン株の樹立が進んでいない。本研究の目的は、1)本ウイルス感染症を再現するマウスモデルの作出 2)弱毒生ワクチン候補株の作出およびその評価である。 2020年度の成果として、岐阜県内の畜産農家にて下痢症を呈し死亡した成牛の下痢便および気管スワブより、BCoVの遺伝子の検出および分離に成功した(Microbiology Resource Announcementsに受理)。また、Vero細胞における分離BCoVの増殖性が著しく低いことが分かったため、代替案としてHRT-18細胞にてBCoVを連続継代することした。2021年度には、分離したBCoVを2日齢の乳飲みマウス(ICR系統、10匹)に経口投与し、乳飲みマウスが下痢症を引き起こすか否かを検証した。その結果、培養上清を接種した非感染マウス3匹はいずれも症状を示すことはなかった一方、ウイルス接種マウス10匹中3匹が軟便を示し、また10匹中2匹が下痢症を呈した。本年度に、BCoV経口投与乳飲みマウスの下痢便より感染性ウイルスとウイルス遺伝子の検出を試みた。しかしながら、下痢便より感染性ウイルスとウイルス遺伝子は検出されなかった。また、ウイルス経口投与マウス由来の血清より、抗BCoV中和抗体の検出を試みたものの、中和抗体の上昇は認められなかった。また、3-4週齢のマウスにBCoVを経鼻接種することで、呼吸器症状を示すか否かを検討したものの、症状を示す個体は確認されなかった。また、HRT-18細胞にて20代継代したBCoVを得たため、現在、継代株の増殖性と全塩基配列を決定中である。
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