研究代表者は、獣医臨床応用を目指した角膜移植の代替となりうる人工角膜の開発、と題し、2年間の研究計画のうち2年目の研究を実施した。いわゆる小動物臨床の対象となる犬や猫といった獣医療の臨床現場において、眼球の最外層をなす角膜疾患は非常に多く遭遇する疾患であり、難治性の角膜疾患にも度々遭遇することがある。難治性角膜疾患に対して唯一有効である治療法は角膜移植であり、ヒト医療領域では、そうした疾患に対しては実際に角膜移植を治療として行っている。しかし、ヒトにおいてはアイバンク等のインフラが整備されており、移植のハードルは動物より低い。しかしながら、ヒトにおいても国内ではドナーが少なく、輸入角膜に頼った角膜移植術が実施されているという現状もある。 そうした中、小動物獣医療領域においては角膜移植適応患者に対し、重度のドナー不足等が原因となり角膜移植がほとんど実施できていない現状がある。そこで我々は、小動物臨床領域に応用可能な人工角膜の作成を目指した。人工角膜の候補として、生体適合性の高い脱細胞 化角膜を応用することをターゲットとした。 当該年度の目標は、前年度に確立した脱細胞化角膜を用いて、その保存方法や細胞の生着を確認した。脱細胞化した角膜に細胞生着が確認され、作成した脱細胞化角膜は細胞毒性はなく、細胞生着に有用な足場構造であることが確認された。次年度以降、この脱細胞化角膜に細胞を生着させるモデルを樹立し、詳細な検討を実施していく予定である。
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