研究課題/領域番号 |
20K15675
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茂木 朋貴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (40803416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GWAS / 壊死性脳炎 / ジェノタイピング / SNP / 全エクソーム解析 / 発現変動解析 / RNA-seq / 犬 |
研究実績の概要 |
犬における壊死性髄膜炎の遺伝要因を行うために、全ゲノムジェノタイピングを実施した。これにより保有するパグおよびヨークシャーテリアのサンプルから約22万箇所のSNP情報が得られた。この結果より犬種ごとにおけるゲノムワイド関連解析(GAWS)を行い、パグとヨークシャーテリアでそれぞれ3 箇所、発症に関連のある可能性のある領域が検出された。またこれらの領域は両者において一致しておらず、当初の仮説通りに疾患の発症に関わる遺伝子が品種によって異なることが示唆された。 この感受性領域においてヨークシャーテリアでは制御性T細胞に関わる領域や人のラスムッセン脳炎で関連する遺伝子が存在しており、疾患発症に関与する領域が存在している可能性がある。この遺伝子のうち一つは既に当チームで調べているものであり、今までの研究結果が外挿できる可能性がある。 またパグでは炎症に関わる遺伝子などが検出されており、脳における炎症のコントロール不良によって疾患発症を引き起こしている可能性が考えられた。 これらの品種による違いは、パグに多い劇症型でかつ大脳軟膜の直下と皮質境界領域を特徴とする壊死性髄膜脳炎とヨークシャーテリアに多い主に大脳白質の炎症を主とする壊死性白質脳炎による2つの表現型の違いを表している可能性が考えられる。現在これら遺伝子における多型や機能解析を行うために、該当遺伝子の全エクソーム解析やトランスクリプトーム解析の系の確立を実施している。 またその他の頭蓋内における遺伝的異常を疑われた犬に対して本研究で作成した全エクソン解析システムを適用することで新規の遺伝子異常を発見し報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のためバイオバンクに保管してあるゲノムの回収が遅れ、試薬が届かないなど研究の開始に手間取ったが、当初の予定頭数の解析は進行している。犬の白血球抗原多型の決定は当初想定した領域と異なった感受性領域が検出されたため、本研究ではこれらの領域は他のエクソームシークエンスと同時に行うことを計画している。また得られたデータを再解析していくことで他の疾患における感受性領域などが見つかってきており、本研究の結果はこの研究のみならず他の研究へもシナジーを生むことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ヨークシャーテリアおよびパグGAWSについてはまだ症例数が少なく、解析をより有益なものにするため全国から症例を集め、ジェノタイプを行い、データを追加して更なる解析を実施する予定である。予定症例数は50頭を検討しており、現在7割の症例を集め終えている。これらの情報が完成し次第、メタアナリシスを実施し、発症に関わる共通の領域と、品種特異的な領域に分けることで、疾患における表現型の違いを探索する。 また感受性領域近位にある遺伝子に対しては多型や発現量の変化の発現量を調べる予定である。協力者からFFPEサンプルを多数借りられたため、これらも解析に含むかグレードを検討する予定である。またDLAのタイピングについてはNGSを用いた包括的な解析が可能であるか現在検討中であり、可能な場合は現在作成しているレプリカゲノムを用いて保有している全ての症例におけるタイピングを実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって学会・研究会などが開催されず、また他の大学への移動が困難になったためサンプルの回収のために予定していた旅費などが使用されていない。また全エクソーム解析用の外注費はDLAのタイピングを多型を疑う遺伝子の解析を同時に行うため次年度の解析としている。このため本年は昨年度に当てられなかった費用をタイピング費用に回し、より大規模に実施していく。これ以外に昨年分も合わせて同時に全エクソーム解析を実施することで、当初よりもデータ量の取れる次世代シークエンサーを選択できることになり、他検体の解析を進行させることが可能となると考えている。
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