本研究では、BRD4阻害薬を用いてCA4の抗腫瘍効果を増強し、薬効用量と心毒性あるいは神経土工性発現用量とのマージンを確保できる可能性を検証した。 イヌ乳腺腫瘍由来の腫瘍細胞株を用いて、CA4およびBET阻害薬(JQ1)を併用した際の薬効と薬理機序について、WST-8アッセイやBRD4に対する免疫組織化学染色等を用いた in vitro 試験系にて評価した。また、免疫不全動物に移植して担がんマウスを作製し、得られた動物に両剤を併用投与して in vivo における抗腫瘍効果を評価した。さらに、CA4誘発性心筋障害モデルラットを作製し、JQ1を併用した場合のCA4誘発性心筋障害の病態を解析した。 その結果、in vitroおよびin vivoのいずれにおいても、併用により抗腫瘍効果を増大できることが明らかになった。また、CA4単剤のみならず、併用時でもBRD4は細胞質への遊走が認められた。併用時にはBRD4の細胞質への遊走が認められても増殖抑制作用は増強されていたことから、JQ1はBRD4の細胞質への遊走自体には関与せず、CA4の作用により細胞質へ移動したBRD4のヒストンへの再結合を阻害することにより、併用効果に寄与したことが示唆された。さらに、心筋障害モデルラットを用いた実験からは、併用時にもCA4誘発性心筋障害は増悪せず、むしろCA4によって誘発される心拍数低下および心拍拍出機能の低下が抑制される傾向が確認された。 以上の結果から、CA4とJQ1との併用により、CA4の心毒性リスクを低減したがん化学治療法を開発できる可能性が示された。
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