研究実績の概要 |
本研究目的は、「家畜に異常産を引き起こすウイルスの小動物感染モデルの開発」である。アルボウイルスで家畜に異常産を起こすシュマーレンベルグウイルス(SBV)とアカバネウイルス(AKAV)を用いて妊娠ハムスターで小動物モデルを確立する。感染動体を解析するツールとして、本年度は蛍光SBVの作製を試みた。 1. リバースジェネティクスに用いるSBVのSゲノムRNA発現プラスミドに、RVFV Sゲノム由来のIGRとポジティブセンス鎖のGFP遺伝子を挿入し、アンビセンスSゲノム(SBV S-GFP)を構築した。 2. SBV S-GFP RNA発現プラスミドとSBVのLおよびM発現プラスミドをT7ポリメラーゼ恒常発現BHK/T7-9細胞にトランスフェクトすることで、GFP発現SBV(GFP-SBV)を回収できたが、これは蛍光発現しないウイルスであった。 3. そこで以前に確立した、一部5' UTRを欠損させたAKAV S-GFP mutantの構築をもとにSBV S-GFP mutant発現プラスミド(SBV S-GFP/42, /38, /37, /36, /35, /34, /33, /32)を構築し同様にトランスフェクトしたところ、SBV S-GFP/34以上の長さの5' UTR を持つものでGFP蛍光が確認でき、いくつかの蛍光SBVが回収できた(eGFP/42-SBV, eGFP/38-SBV, eGFP/36-SBV)。これらの塩基配列を確認したところ、変異は起きていなかった。これは、AKAVと同様、アンビセンスゲノムの5' UTRを削ることでポジティブセンス鎖の転写が活性化することを示しており、世界で初めて蛍光SBVの作出に成功したことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は蛍光SBVを作出し、in vitroとin vivoでその性状解析を行う計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究を中断せざるを得ない状況があった。そのため計画の進捗にやや遅れがあるものの、AKAVで確立した手法を活かして数種の蛍光SBVの作出に成功した。また蛍光SBVのレスキュー効率は野生型SBVと異なり非常に効率が悪く、回収までに時間がかかることが分かった。 以上のことから、本年度はおおむね順調に進展しているといえる。まだ回収できていない蛍光SBVのバリアント(eGFP/37-SBV, eGFP/35-SBV, eGFP/34-SBV)の作製とそれらの性状解析は来年度に行う。
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