本研究目的は「家畜に異常産を引き起こすウイルスの小動物感染モデルの開発」である。シュマーレンベルグウイルス(SBV)とアカバネウイルス(AKAV)のハムスター感染モデルを確立する。 【蛍光SBVの性状解析】昨年度までに、作出したGFP/42-SBV、GFP/38-SBV、GFP/36-SBVの培養細胞におけるプラックサイズ、増殖曲線、蛍光発現時期の比較を行なった。本年度はさらに蛍光維持能力について検討した。プラック毎の蛍光の有無を観察したところ、GFP/38-SBVのみ5代継代後も100%のプラックでGFP陽性であった。これらの結果より、GFP/38-SBVが感染を可視化できる最も優れた蛍光SBVである。 【蛍光AKAV妊娠ハムスター感染実験】1. 本年度はn数を増やし、妊娠日齢7日目(n=2)、8日目(n=4)、9日目(n=2)、 10日目(n=3)、11日目(n=3)、非感染群(n=3)とした(全て皮下接種)。出生子の死亡率は妊娠9日目投与群が80%と最も高かった。2. 妊娠8、10、11日目投与群および非感染群の新生子を採材し、ウイルス量をリアルタイムPCRで計測した。妊娠8日目投与群で最もウイルス量が多く、脳よりも胸腔・腹腔内臓器や筋肉で多く検出された。3. 妊娠9日目にウイルス投与し感染2~5日目に開腹した。感染4日目の胎盤、感染5日目の胎盤と胎子で蛍光が観察できた。蛍光AKAVは野生型と同様にハムスターに異常産を起こし、なおかつ可視化できる有力なツールであることが示された。 【rSBV妊娠ハムスター感染実験】昨年度までに、妊娠9日目に皮下および腹腔内接種したところ出生子の死亡率がそれぞれ0%、13%であった。本年度は静脈投与を試みた。妊娠8日目接種(n=1)では死亡率33%、妊娠9日目接種(n=2)では43%となり、SBVの感染モデルとして有用であることが示唆された。
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