研究実績の概要 |
腎臓病の罹患犬と非罹患犬において、腎組織における脂肪滴蓄積の程度と尿中脂質の一つであるコレステロールの排泄について比較した。なお、猫については、腎臓病の剖検検体を入手できなかったことから、今年度の研究対象から除外した。糸球体への脂肪蓄積は慢性腎臓病(CKD)の有無に違いを認めなかったが、尿細管上皮への脂肪滴蓄積は、CKDに罹患した犬のほうが非罹患犬に比べて高い傾向を示した。急性腎障害(AKI) やCKDを罹患した犬の尿中総コレステロール(T-cho)(AKI:805.5 μmol/g Cre, n=4, CKD: 48.7 μmol/g Cre, n=17)は、健常犬(健常: 3.3 μmol/g Cre, n=12)よりも著しく高かった (AKI vs 健常: p < 0.05, CKD vs 健常: p < 0.01)。また、尿T-choは、血清クレアチニン(r = 0.37、p < 0.05)、血清尿素窒素(r = 0.48、p < 0.01)、尿L型脂肪酸結合タンパク(r = 0.59、p < 0.01)および尿タンパク・クレアチニン比(r = 0.86、p < 0.01)と正の相関関係を示し、尿比重(r = -0.67、p < 0.01)と負の相関関係を示した。腎臓病に罹患した犬では、尿細管上皮細胞における脂肪滴の蓄積が増加し、尿へのコレステロール排泄が増加することから、腎疾患のマーカーとして尿中のコレステロールを利用できる可能性が考えられた。
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