研究課題/領域番号 |
20K15679
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高島 諭 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (70734664)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 犬 / 猫 / 尿 / 脂質 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病を発症した犬と猫について、尿中に含まれる脂質の網羅的な測定を脂肪を試みてきた。その測定結果を、同時に測定した正常な犬や猫の尿の結果と合わせて、現在、解析中であるが、適当な方法の確立に至っていないため、期待した成果はまだ得られていない。今後、尿中脂質プロファイルの解析方法を確立できれば、測定する検体数を順次増やしていく予定である。 また、正常な犬や猫の腎臓から抽出した総RNAを用いて、リアルタイムRT-PCRにより評価できる犬と猫の腎臓における脂質代謝に関わる転写因子を選定してきた。その結果、複数の候補の中から、犬ではperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR) γ、sterol regulatory element binding protein (SREBP)、Scavenger Receptor Class B Member 1 (SR-B1)および Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1)、猫ではPPARγおよびSREBPといった転写因子について発現量を評価できることがわかった。これらの転写因子について、現在、慢性腎臓病に罹患した犬や猫の腎臓における発現量を定量している。まだ途中ではあるが、慢性腎臓病の猫においてPPARγとSREBPの発現量が正常猫よりも多い傾向を確認している。今後は慢性腎臓病の犬の腎臓についても解析を進めていく。これらのデータがまとまった段階において、脂質代謝に関わる転写因子と、尿中脂質プロファイルおよび腎組織における脂質の蓄積状況との関係性についても評価していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿中脂質の評価に液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)による解析を予定していたが、脂質の網羅的解析に最適な方法を見出せず、また解析結果の解釈にも苦慮している。現時点で測定済みの検体は少なく、結果の解釈も思うようにできていないが、LC-MS/MSを専門とする研究者にアドバイスをいただきながら解析を進めている段階である。 また、本研究には剖検検体の腎臓を研究材料に用いることを予定していたが、腎疾患を背景にもつ剖検検体が予想外に少なく、材料の獲得にも苦慮している。十分ではないが、入手できた検体から粛々と分析を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
LC-MS/MSにより測定済みの尿中脂質プロファイルについて、結果の解析を進めていく。解析方法を確定できたら、さらに測定する検体数を増やし、腎疾患と尿中脂質プロファイルとの関係について分析する予定である。 腎疾患を有する剖検検体の腎臓が得られ次第、腎臓における脂質の蓄積と代謝との関係について分析を進めていく。腎臓における脂質蓄積の特徴(部位や程度)と脂質代謝に関わる転写因子の発現量との相互関係について分析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
尿中脂質プロファイルの解析について計画通りに実験を進められなかったこと、さらに尿中プロファイル解析方法が確立した上で実施できる腎組織のマイクロダイセクトを実行できていないことに起因する。外部組織への相談や分析委託も視野に入れ、研究を進めていく予定である。 またコロナ渦で旅費を伴う学会参加ができなかったことにも起因する。今年度は、オンライン参加の学会も含めて、積極的な成果発表に努めていく。
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