研究課題/領域番号 |
20K15685
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
坂口 翔一 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20815279)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リバースジェネティクス / ウイルス |
研究実績の概要 |
ネコモルビリウイルスは2012年に報告されたウイルスだが、リバースジェネティクス系が樹立されていない。近縁のウイルス(例えば麻疹ウイルス)との比較や、感染に使われる受容体を同定するためには、組換えウイルスを用いたウイルスタンパク質の詳細な解析が必要である。 既知のパラミクソウイルス属のリバースジェネティクス系では、ウイルスゲノム配列をコードするプラスミドに加え、N・P・Lタンパク質それぞれを発現するサポーティングプラスミドが必要である。そこで本年度はネコモルビリウイルスのゲノムおよびN・P・L遺伝子のクローニング、トランスフェクションを行った。まず、研究代表者が過去にウイルス分離したウイルス株の全長ゲノムをT7プロモーター下にクローニングした。T7ポリメラーゼ存在下でこのプラスミドからウイルスゲノムRNAが生成される。また、ウイルスタンパク質をコードする遺伝子それぞれをCMVプロモーター下にクローニングした。このN・P・Lタンパク質が作るRNP複合体によりウイルスゲノムRNAが複製される。これらプラスミドを、T7ポリメラーゼ発現プラスミドと共にCRFK細胞にトランスフェクションし、CPEの観察を行った。さらに、Pタンパク質およびLタンパク質の発現量を観察するためのポリクローナル抗体を作製し、その機能評価を行った。 並行して、cDNAスクリーニング法とMinIONシークエンスを用いることでウイルス感染に関わる細胞性因子の同定法の確立を行った。今回の実験では、ウイルス感染細胞から作製したcDNAライブラリー(防御因子をコードするmRNAの発現上昇が期待される)を別の感受性細胞に導入し、ウイルス感染に耐性を示した細胞からDNAを抽出した。このDNAに含まれるcDNAライブラリー由来配列をMinIONシークエンスすることで、比較的短期間で細胞性抗ウイルス因子を探索できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネコモルビリウイルス分離株のゲノム配列を元にゲノムプラスミドとサポーティングプラスミドを作製、T7ポリメラーゼ発現プラスミドとともにCRFK細胞にトランスフェクションすることで、組換えウイルスの作製を試みている。現在までにCRFK細胞に分離株を感染させた際のような顕著なCPEがみられていない。この原因を探るため、クローニングしたゲノム両端配列の再確認、サポーティングプラスミドによるそれぞれのウイルスタンパク質発現の確認等、リバースジェネティクス系の各ステップの確認を行なっている。 一方、2年目の受容体同定に用いる改良型cDNAライブラリースクリーニング法のProof of concept試験を行い、既知のcDNAライブラリースクリーニング法と次世代シークエンス法を組み合わせることでウイルス感染に関わる細胞性分子の同定を行うことが可能なことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続きリバースジェネティクス系の改善を行う。リバースジェネティクス系では、クローニング時や両端(プライマー)配列のエラーがあった場合、組換えウイルスが産生されない。また、パラミクソウイルスのリバースジェネティクス系ではゲノム・サポーティングプラスミドの配分が組換えウイルスの産生量に大きく影響する。そこで、作製済みのプラスミド配列の再確認およびデータベースに登録された他の野生株配列を使ったプラスミドの構築を行い、トランスフェクション時の各プラスミド量の調整および発現量のモニターを行う。リバースジェネティクス系の確立後、薬剤耐性遺伝子を組み込んだ組換えウイルスの作製を行い、改良版cDNAライブラリスクリーニング法による受容体同定を試みる。
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