研究実績の概要 |
コモンマーモセット(マーモセット)は、小型で取り扱いが容易であり、繁殖効率も高いため、発生工学研究などの分野で有用な霊長類モデルとして使用されてる。特に、マーモセットは神経科学研究においてその利点が示されている。しかし、成長期を過ぎたマーモセットは、原因不明で治療が困難な慢性疾患である消耗性症候群(marmoset wasting syndrome: MWS)を自然に発症することがあり、これが研究における大きな障害となっている。MWSは削痩、骨石灰化障害、筋萎縮、脱毛を主な徴候とする。
本研究では、国内の研究機関と協力し、MWSの病態にビタミンDがどのように関与しているかを明らかにするために、臨床的および病理学的な解析を行った。その結果、MWSに罹患しているマーモセットの臨床検査所見が、厚生労働省によるヒトのビタミンD依存症2型の診断基準(低Ca血症、1,25(OH)2Dの高値、くる病/骨軟化症など7項目)と一致していることを確認した。
さらに、MWSの病態解明の過程で、その関連疾患として十二指腸拡張症に着目した。これに関する臨床的・病理学的解析を実施し、Scientific reports誌にて新規疾患として国際的に提唱した。また、十二指腸拡張症の生前診断法として、造影レントゲン検査、単純レントゲン検査、腹部超音波検査の診断精度を評価した。十二指腸拡張の正確な病態は現在も不明ですが、十二指腸-結腸間の癒着や十二指腸潰瘍が病態進展に関与している可能性が示唆された。
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