研究課題/領域番号 |
20K15691
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 仁美 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (80624056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精子運動性解析 / GPIアンカー型タンパク質 / 体外受精 |
研究実績の概要 |
マウスの各組織において発現量が多く組織恒常性維持や高次機能に重要なGPIアンカー型タンパク質(GPI-AP)を同定する研究の一環として、研究代表者は、骨格筋から新規GPI-AP(MuGPI-APと仮称)を同定した。この分子の機能を生体レベルで解析するために、ゲノム編集法にてノックアウトマウスを作製し表現型を観察したところ、雄ノックアウトマウスと野生型雌マウスの交配で、1出産あたりの産仔数が有意に増加した。本研究では、この現象の裏にひそむ分子機構を分子生物学的手法、遺伝学的手法や生殖・発生工学的手法を用いて集約的に解析することで、雄性因子による新たな妊娠制御メカニズムを明らかにしたい。本年度は、MuGPI-AP KOマウス精子の精子運動性解析を実施した。ここでは、以下の測定パラメータについて野生型とKO精子の間で比較解析した:1)精子運動率、2)精子前進運動率、3)平均速度、4)直線速度、5)軸道速度(運動の始点から終点まで実際の距離で測定した時の平均速度)、6)精子頭部振幅、7)精子頭部振動数、8)直線性、9)直進性その結果、KOマウス精子では、①3)の平均速度の亢進がみられた、②6)の精子頭部振幅の亢進と7)の精子頭部振動数の減弱がみられた、③8)直進性の向上がみられた。一方、体外受精率や受精卵の体外発生率に有意差は認められなかった。 これらの結果を総合すると、MuGPI-AP KOマウス精子は野生型精子に比べて、直線的に効率よく卵に到達する能力を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KOマウス精子の精子運動性解析から、MuGPI-APは精子の運動性を制御している可能性が示唆され、今後の研究の方向性に指針を与えた。また、この分子は、精子の受精能や受精後の胚発生には、直接関与していないことがわかった。精子表面には数多くのGPI-APが発現し、そのいくつかは精子受精能に直接関わっているが、運動性を制御するものはこれまで見出されていない。よって本研究をすすめることで、受精機構の新たなメカニズムがあきらかになることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画のうち以下の未解決の項目について予定どおり研究を進める。 1)MuGPI-AP発現細胞の同定。2)MuGPI-AP KOマウス精子の人工授精によるin vivo機能解析。3)MuGPI-AP KOマウス精子での受精誘導・促進分子の発現解析。4)受精誘導・促進分子KOマウスでのMuGPI-APの発現。5)MuGPI-AP発現細胞の遺伝子発現比較と他の重要分子の同定。6)重要分子KOマウス作製と機能解析。
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