研究課題/領域番号 |
20K15697
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊丹 暢彦 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 訪問研究員 (20849616)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵子 / 胚 / ヒストン / アルギニン / メチル化 |
研究実績の概要 |
申請者は2年度目までに、受精後の雄性ゲノムの再プログラム化に必須であると言われているH3R17me2aの細胞周期による変動を解析した。その結果、初期胚の細胞分裂間期では核でのシグナルが観察されるH3R17me2aが、分裂期に入ると同時にそのシグナルが消失することを見出した。同様の現象は卵子やES細胞、線維芽細胞でも観察された。 本年度はまず卵子免疫染色のための固定処理をする前に界面活性剤により処理することで、クロマチンとの結合が不十分な修飾ヒストンを除去したが、それでも細胞分裂間期のクロマチンにH3R17me2aが存在していた。このことからH3R17me2aは核内に遊離しているわけではなく、クロマチン内に取り込まれており、細胞分裂の開始とともに脱メチル化される、もしくは他のヒストンとの置換によりクロマチンから離れることが推測できる。そこでヒストン脱メチル化酵素であるPADI1に着目し、PADI1の阻害剤であるD-Cl-amidineにて卵子を処理した。すると分裂期に入って消失するはずのクロマチン上のH3R17me2aシグナルが、D-Cl-amidineの処理により残存することを発見した。さらに体外成熟中にD-Cl-amidineを処理した卵子は受精後の胚発生能力が顕著に低下しており、胚発生培養への添加でも濃度依存的に発生能力を阻害した。これらのことから、卵子や初期胚においては分裂期にクロマチン内のH3R17me2aが脱メチル化されることが正常な胚発生のために重要であることが推測できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H3R17me2aが胚発生中の分裂期のクロマチンから消失することは古くから示唆されてきたが、阻害剤を用いてそのメカニズムを探索し、胚発生との関連を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
異動により研究環境の変更があった。今後は当該脱メチル化酵素のノックダウンによる表現型の解析や、種を超えて同様の現象が観察されるかを家畜(ウシ)を対象として検証する予定である。
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