現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カニクイザルの胎盤から回収したCytotrophoblastをヒトTS細胞と同じ培養条件を用いて培養したところ、TS細胞様のコロニーを得ることができた。また、カニクイザルの胚盤胞期胚も同様の培養条件で培養したところディッシュ底に接着しoutgrowthコロニーを形成することがわかった。さらにこのコロニーを継代したところTS細胞様のコロニーを増殖させることができた。免疫染色によりこれら細胞がGATA3, ITGA6, TP63, KRT7, CDH1, TEAD4などのTS細胞のマーカータンパク質を発現していることがわかった。このことから、カニクイザルTS細胞はヒトと同様のメカニズムで幹細胞性を維持できることが示唆された。また、カニクイザルTS細胞の分化能を検討したところ、Syn-T細胞への分化は形態的に認められたが、EVT細胞への分化はさらなる検討が必要である。 カニクイザルのトロホブラスト細胞の機能評価を行うための予備実験として、カニクイザル胎盤および胚盤胞から樹立されたTS細胞にレンチウイルス(LV)ベクターを感染させて遺伝子導入実験を試みた。通常の方法で得たLVベクターでは力価が低く、カニクイザルTS細胞に効率良く感染させられる力価を持つウイルスを作製する必要があった。そこでLVベクターを産生時にセンダイウイルス由来因子をHEK293T細胞へ同時にトランスフェクションすることで、約10倍高い力価を持つLVベクターを作製することが可能となった。これによりカニクイザルTS細胞へ蛍光タンパク質を発現させてラベリングすることができ、生体内でキメラ胎盤を作製する際に有用なツールとなることが考えられる。
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