| 研究課題/領域番号 |
20K15704
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| 研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
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研究代表者 |
山口 卓哉 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (60865111)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | ヒト化マウス / ヒト赤血球モデル / クッパー細胞 / 自然免疫 / NOGマウス |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、NOGマウスのクッパー細胞によるヒト赤血球(hRBC)排除機構の分子レベルでの解明と、hRBCが長期間維持される遺伝子改変NOGマウスの開発を目的とする。令和2年度は公開データベースの解析を行い、クッパー細胞に発現する自然免疫関連受容体等、計17分子をリストアップした。これら分子の組換えタンパク質を、マウス抗体定常部位(Fc)との融合タンパク質として哺乳類細胞発現系を用いて作製し、hRBC表面への結合をフローサイトメトリーで調べた。その結果、分子X（特許出願予定のため名称は非公開とする）がhRBCに結合することは再現性良く確認された一方で、他の16分子については結合が確認できなかった。次に、hRBCと同様にヒト化NOGマウスにおいて再構築されないヒト血小板(hPLT)についても、前述の組換えタンパク質との結合性を調べたところ、hRBCでの結果と同様、hPLTへの結合性を示したのは分子Xのみであった。これらのことは、NOGマウスのクッパー細胞は分子Xを介し、hRBCのみならずhPLTの排除に重要な役割を果たしていることを示唆する。
同時に、薬物によるマクロファージ抑制法の改良を行った。従来、マクロファージを枯渇させる機能を持つクロドロン酸リポソーム（Clo-lip）を免疫不全マウスに投与し、マウス血液内に移入されたhRBCの維持期間を延長させていたが、Clo-lipは毒性が強いため繰り返し投与するとマウスが頻繁に死亡する問題があった。そこで、マクロファージ抑制効果が報告されている塩化ガドリニウム（GdCl3）の評価を行った。GdCl3を継続的に投与したNOGマウスでは、hRBCの維持期間はClo-lip投与群と同等程度延長した一方で、マウスの健康に明らかな異常は認められず、hRBCの生存を長期的に維持する薬物としてGdCl3は有用であると考えられた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子Xを欠損させたNOGおよびC3欠損NOGマウスの系統確立がまもなく完了し、必要数の動物を用いた解析が近日中に可能となる見込みである。令和2年度は、分子XはhRBCのみならずhPLTに結合することを明らかにし、また、マウスの健康を損なうことなくマクロファージを長期的に抑制できる薬物GdCl3を見いだしたことから、hRBCやhPLTを長期間維持できるモデルマウス開発に向けて順調に進捗しているものと考えられる。
しかし、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延により在宅あるいは時短勤務を行わざるを得ない時期があったことや、研究代表者の所属研究機関異動に伴う準備等により研究時間が減少したこともあり、分子Xに続く自然免疫関連分子の同定には至っておらず、候補分子のスクリーニングについてはやや遅れていると考えられる。大きな計画変更の必要は無いが、令和3年度は候補分子のスクリーニングを重点的に推し進めていかなくてはならない。
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| 今後の研究の推進方策 |
C3・分子X両欠損NOGマウスにhRBCを移入して血液中での動態を調べ、NOGマウスのhRBC排除機構におけるC3および分子Xの働きについて明らかにする。また、このマウスにヒト造血幹細胞を移植し、血液中に分化してくるヒト血球を調べ、NOGマウスにおけるhRBCやhPLTの再構築に対するこれら分子の影響を評価する。
同時に、分子Xに続く新たな自然免疫系分子の掘り起こしのため、候補分子のスクリーニングを継続する。重度の免疫不全動物であるNOGマウスでは機能している自然免疫系分子がコンベンショナルなマウスと異なっている可能性も排除できないため、NOGマウスのマクロファージを対象にした網羅的遺伝子発現解析を行う。対象細胞として、hRBCを活発に貪食するクッパー細胞や、クッパー細胞ほど強力ではないもののhRBCの貪食が観察される脾臓マクロファージに加え、反対にhRBCの貪食がほとんど見られない肺や骨髄のマクロファージを用いる予定である。
尚、令和3年度より研究代表者の所属機関が日本大学生物資源科学部に変更となったが、本研究課題は実験動物中央研究所との共同研究として継続されるため、各種実験や解析の実施に大きな影響はなく、研究計画を大幅に変更する必要は無い。
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