研究課題/領域番号 |
20K15705
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
羽田 政司 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 訪問研究員 (10802746)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SCNT / histone variant / early development / epigenetics |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ヒストンバリアントH3.3を体細胞核移植胚で過剰発現させることにより、遺伝子発現に抑制的なヒストンバリアントH3.1/H3.2の排斥を介して、体細胞核移植法の成功率を改善させることを目的としている。本年度はまず、H3.3過剰発現によって、H3.1/H3.2をどれだけ減少させることができるのかを解析した。異なる濃度のH3.3 mRNAを核移植胚に導入し、免疫染色によってH3.1/H3.2量を定量した結果、核移植胚のH3.1/H3.2を正常受精胚のレベルまで矯正できる条件を決定できた。次にこの条件を用いて、H3.3過剰発現核移植胚では個体への発生効率が上がるかどうかを検証したところ、プレリミナリーな結果ではあるが良好な傾向が確認された。これらの結果から、H3.3過剰発現で体細胞核移植法の成功率を改善できる可能性が示唆された。 H3.3過剰発現は核移植胚の遺伝子発現に影響を与えている可能性が考えられる。そこで、その影響を解析するため、核移植胚を用いた少数スケールの遺伝子発現解析 (RNAseq) の実験系をセットアップした。ここでは以下の条件を検討した。(1)材料として必要となる核移植胚の数、(2)試料作製する際のPCRサイクル数、(3)解析に適した試料作製キット。その結果、最適な条件を決定することができたため、次年度はH3.3過剰発現核移植胚の遺伝子発現を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はH3.3過剰発現が核移植胚の胚発生に与える影響を解析することがメインであったが、計画通り検証することができた。加えて、次年度に解析する予定であった初期胚の網羅的遺伝子発現解析の条件検討を実施することができた。これらの理由により、本年度の進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度で決定できたRNAseqの条件を用いて、H3.3過剰発現による体細胞核移植胚の遺伝子発現への影響を解析する予定である。マウス受精卵では1細胞期と2細胞期に重要な遺伝子発現の波が存在することが知られているため、これらの時期に着目して解析する予定である。 また、本年度ではプレリミナリーな実験で、H3.3過剰発現が体細胞核移植法の成功率を改善させるという結果を得ていた。次年度はこの結果をより確かめるために、サンプル数を増やす予定である。
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