今年度は前年度に引き続き、マウス核移植で起こるゲノム変異に着目し、研究を行った。マイクロサテライトと呼ばれる1から数塩基程度の反復配列領域を対象に、全ゲノム解析を実施した。マイクロサテライト領域の全ゲノム解析は技術的な問題で、偽の変異候補が出やすい。マイクロサテライト領域の解析から偽陽性につながる曖昧さを排除するための解析に理想的な細胞セットとして、マウス1個体の体細胞から11株のiPS細胞および2株の核移植(nt)ES細胞を樹立し、解析を行った。その結果、マイクロサテライト領域のショートタンデムリピート(STR)と呼ばれる2~6塩基程度の繰り返し配列で、iPS細胞、ntES細胞はES細胞に比べて、約6倍変異が多いことが明らかとなった。マイクロサテライト領域の変異は、遺伝性の神経・筋疾患(トリプレットリピート病)や発がん等の疾患とも深い関係があることから、ゲノム初期化で起こるこれらの変異は、再生医療への応用に重要な知見であることが推察される。 さらに、ntES細胞の分化能を調べるために、マウス生殖細胞の体外分化誘導系を用いて、調査を行った。今年度はES細胞とiPS細胞を使用し、雌性生殖細胞への体外分化誘導を実施した。その結果、卵胞形成させることに成功した。今後、本命であるntES細胞を用いて、分化誘導を行う予定である。
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