研究課題/領域番号 |
20K15709
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐古 博皓 沖縄科学技術大学院大学, 細胞シグナルユニット, ポストドクトラルスカラー (80793570)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 翻訳速度 / 新生鎖 / タンパク質変性 / miRNA / 糖尿病 / インスリン |
研究実績の概要 |
リボソームがmRNAを翻訳する速度は、局所的に変化している。適度かつ局所的な翻訳速度の低下は、変性に脆弱なタンパク質領域の適切な折り畳みに寄与していると分かってきた。しかし、タンパク質の適切な折り畳みを促進するために、翻訳速度の特異的かつダイナミックな制御機構は未だ分かっていなかった。 miRNAは遺伝子発現を負に調節することが広く知られている。miRNAはmRNAのCDSへも3´UTRと同程度結合するが、CDSに結合するmiRNAの発現量への影響は小さく、なぜ多くのmiRNAがCDSにも結合するのかは分かっていなかった。本研究では、一部のmiRNAはリボソームの翻訳速度を局所的に遅くすることで、新たに生まれたタンパク質の折り畳みを促進しているという概念を提唱し検証することを目的としている。 今年度は、内在性のタンパク質においてもmiRNA/shRNAによって翻訳速度を調節することで標的タンパク質の変性を抑制することが可能かどうか検証した。まず、どのような性質を持った内在性タンパク質が翻訳速度の低下により変性・凝集を抑制できるのかを検証した。そのために、低濃度の翻訳阻害剤により細胞内の翻訳速度を低下させ、不溶性分画(凝集タンパク質)をLC/MS/MSにより解析し、対照群に対して相対量が減少しているタンパク質を同定した。これらのタンパク質は、シグナルペプチド・膜貫通ドメイン・low complexityドメイン・disordered領域を有する傾向にあった。そこで、これらの特性の多くを持ち、その変性が2型糖尿病とも関連があるとされるインスリンに対して非切断型shRNAを設計し、インスリンの変性指標であるプロインスリンのdimer・trimerへの影響を検討したところ、非切断型shRNAにより、monomerプロインスリンに対するdimer・trimerを減少させることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では研究課題期間内に、miRNAのレポータータンパク質の折り畳みに対する影響を①グローバルなmiRNAの減少、②レポーターに結合するmiRNAの阻害、③miRNA mimicによるレスキュー、の3ステップにおいて生化学的に検討し、最終的に④内在性のタンパク質における同様の機序の有無の検討が含まれていた。今年度までに、①から④の研究課題を検討することができているため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、特定のmiRNAの阻害や非切断型shRNAが標的mRNAの翻訳速度に影響を及ぼしていることの直接的な証明として、リボソームプロファイリングを行い、標的mRNAの特異的な領域のリボソーム密度に変化があるのか検討し、論文としてまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析が効率的に進んだことにより、経費を削減することができたため。 そのため、次年度使用額により新たな解析を計画し実施することができる。具体的には、リボソームプロファイリングを行い特定の領域のリボソーム密度を解析する。
|