研究実績の概要 |
本研究では、転写開始点を含む100塩基程度のコアプロモーター領域に着目し、塩基配列に潜在する特異的な転写活性調節の作用機序を解明することを目的とした。先ず、転写制御におけるコアプロモーターの働きを生きたショウジョウバエ初期胚において直接可視化するライブイメージング技術を新たに開発した。詳細な定量画像解析の結果、エンハンサーとは独立して、コアプロモーター自身も転写バーストの制御に大きく寄与することを新たに見出した。特に、コアプロモーターエレメントの中でもTATA-boxは転写バーストの振幅を増大させる役割を担っている一方で、InrやMTE、DPEは、主に転写バーストの頻度の調節に寄与しているという役割の違いが存在することを初めて解明した。さらに上記解析から得られた実験結果の普遍性を検証するため、fushi tarazu(ftz)と呼ばれる初期発生に必須な分節遺伝子をモデルとして、ゲノム編集を用いて内在遺伝子のコアプロモーターを改変したところ、先ほどの結果と一致してTATAやDPEが転写バーストの振幅や頻度を異なる形で調節していることが明らかとなった。また、各変異によって転写バーストの制御が大きく乱れ、結果として初期胚の体節形成に異常を引き起こすことが明らかとなった。以上の成果をまとめ、”Moe Yokoshi et al., Nucleic Acids Research, 2022”として発表した。
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