研究課題/領域番号 |
20K15712
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
牧野 支保 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (70791458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オートファジー |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまでにオートファジーによるRNA分解には選択性があることを見出している。本研究課題では、分解の標的となるRNA(mRNA、tRNA)の認識機構やその生理機能を明らかにすることを目的として研究を進めてきた。次年度の本年は、オートファジーによる優先的なリボソーム-mRNA分解に関わる因子の解析を行った。また、優先的に分解されるtRNAについて特徴を調べ、可視化する実験系の構築を行った。得られた成果は以下の通りである。 1)初年度に同定したオートファジーによる優先的なリボソーム-mRNA分解に関わる因子について、オートファゴソームのマーカータンパク質Atg8と相互作用する可能性を検証した。その結果、同定した因子はAtg8と結合することが分かった。2)次に同定した因子のAtg8結合モチーフの候補となる配列を探索した。その配列の変異体を発現させると、優先的に分解されるmRNAの液胞内蓄積量は低下していた。従って、一部のリボソーム-mRNAのオートファジーによる優先的な分解は、本研究課題により同定した因子とAtg8との相互作用に依存することが示唆された。また、tRNAの分解について3)データベースの情報を元に解析したところ、優先的に分解される上位のtRNAは特異的な構造や修飾塩基を持つことが分かった。さらに、tRNAの局在解析を行うため蛍光in situハイブリダイゼーション法の実験系を構築し、オートファジー依存的に液胞に運ばれるtRNAの可視化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーによる一部のリボソーム-mRNAの優先的な分解に、初年度に同定した因子とオートファゴソームのマーカータンパク質との結合が重要であることを見出すことに成功しており、順調に進展していると考えている。一部のtRNAの優先的な分解についても、その特徴について詳細が明らかになりつつあり、最終年度には当初の目的を達成したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は1)オートファジーよる優先的なmRNA分解に関わる因子と2)tRNAの優先的な分解機構の詳細について、以下の観点から解析を進める。 1.これまで主に窒素源飢餓を模倣したラパマイシンという薬剤処理条件下で解析してきたため、本研究課題で同定した因子がより生理的な飢餓条件でオートファジーを誘導した際の優先的なmRNAの分解に関与するかを検証する。種々の栄養飢餓におけるオートファジーを介した優先的なmRNA分解機構の共通性を明らかにする。 2.網羅的に翻訳効率を調べることができるリボソームプロファイリング法と液胞内に運ばれたRNAを用いたtRNA-seqのデータを比較することで、選択的なtRNA分解による細胞質のtRNA量の変化がタンパク質合成活性に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では高額なrRNA除去キットの購入を予定していたが、より安価なキットを使用することになったため、その差として未使用額が生じた。今後本研究課題で行う次世代シーケンス解析などの実験を実施するための試薬・備品の購入費用に充て、有効に活用する。
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