研究課題/領域番号 |
20K15716
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 将 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (30869061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 減数分裂組換え / 交叉型組換え / 組換えDNA合成 |
研究実績の概要 |
減数分裂期における交叉型組換え経路選択の仕組みを明らかにするために、組換えDNA合成の経時的かつゲノムワイドなマッピング系の確立に着手した。具体的には、(1)組換えDNA合成をマウスの生殖細胞で検出するためにチミジンアナログにより標識する方法の条件検討、(2)経時的変化を捉えるためにマウス精細胞を減数分裂前期の異なるステージ(組換えの進行に伴い4つのサブステージに分けられる)に分画・抽出する方法の条件検討を行なった。 (1) まず、精巣から単離した精細胞を1-24時間、in vitroで培養を行い、DNA複製期を含む精細胞において、チミジンアナログであるBrdU及びEdUによる標識の検出に成功した。さらに、より長期間の培養による効率的な標識の条件確立を目的とし、生後2週齢のオスマウスの精巣を1-10日間器官培養し、減数分裂前期の組換え開始前の精細胞が組換えDNA合成及び交叉型組換えをex vivoで完了する条件を確立させた。これに加えて、オスとメスの交叉型組換え制御機構の性差を検証する目的で、卵細胞をex vivoで器官培養する条件についても検討を行い、これまでにチミジンアナログによる標識が可能であること、及び減数分裂組換えが進行することを確認した。 (2) BSA gradient法を用いて成熟したオスマウスの精細胞を分画し、これまでに4つのステージの内2つのステージについては、80-90%以上の純度で分画・抽出できること、さらには分画・抽出後の精細胞がin vitroで培養可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組換えDNA合成に伴うチミジンアナログの取り込み・標識を行う上で必要なマウスの精細胞及び卵細胞のin vitro・ex vivoの培養方法の確立については、概ね計画通りの進捗が得られた。一方、チミジンアナログの取り込み・標識の条件検討を行なう上で、まずは免疫染色による検出を試みたが、DNA複製期におけるチミジンアナログの取り込み・標識は検出可能である一方で、減数分裂期前期の組換えDNA合成に伴うチミジンアナログの取り込みが感度良く検出できなかった。組換えDNA合成のゲノムワイドなマッピングを行う上で十分量のチミジンアナログが染色体上に取り込まれる条件を引き続き検討する必要があり、当初の計画以上の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、組換えDNA合成に伴うチミジンアナログの取り込み・標識の条件の確立を目指す。具体的には、減数分裂前期の細胞における効率的なチミジンアナログの取り込み・標識を促進するために、BSA gradient法を用いてマウスの精巣から減数分裂前期の精細胞のみを抽出し、それらをin vitroで培養し組換えDNA合成をチミジンアナログで標識する方法を確立させる。 上記と平行して、組換えDNA合成後の連結前のニックDNAを回収してマップすることで、チミジンアナログによる標識に頼らずに組換えDNA合成の末端をマッピングする方法についても検討を行う。いずれかの方法による組換えDNA合成のマッピング法を確立させることを最優先に本申請研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の計画ではゲノムワイドマッピングを行うためのサンプル調製まで到達する予定であったが、新たな系を確立するための条件検討に想定以上の時間を要し、また、コロナの影響で研究自体の進捗が滞ったこともあり、申請研究の進捗が遅れ、当初購入を予定していた物品の大部分を購入しなかったため、残額が生じた。 本年度は前述の計画に沿って研究を進め、系の確立に関しては一定の進捗が見られた段階で次のステップに必要な物品の購入を行うことを予定しており、申請研究の4年間の期間全体の中で使用額を調整する形で研究を進めることを計画している。
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