研究課題
マイクロ電子回折(MicroED)は,高輝度放射光X線でも非常に困難なサブミクロンサイズの有機化合物またはタンパク質結晶から効率的に回折データを得る手法として注目されている.本研究では,電子回折データ自動処理パイプラインを開発し,さらに測定系へのフィードバックを可能にすることで,ハイスループットかつ高品質なデータ収集・解析系を構築することを目的とする.この開発により,特に粉末状有機分子化合物から迅速な構造決定を可能にする.本年度は自動処理パイプラインの開発を進めた.申請者がマイクロビームX線を用いた微小結晶構造解析のために開発したKAMO (Yamashita et al. 2018)を発展させ,半手動ではあるが大量の回折データを簡便に解析することが可能になった.データ収集はVeloxソフトウェアを用い,その出力形式であるEMDファイルを変換せずに直接処理できるよう,DIALSソフトウェアに対するプラグインを開発・公開した.開発中のシステムを用いて,実際に有機化合物BPPV2の構造決定に成功し,Journal of the American Chemical Societyに発表した(Lu et al. 2020).本解析では合計74データセットを収集し,そのうち32データセットをKAMOによってマージすることで高品質なデータを得た.また,標準試料としてビオチンを用い,データ収集の冗長度と質の関係について調査した.結果,多くのデータを用いることで構造精密化におけるR値や結合距離等の精度が向上することが示された.現在論文を準備中である.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 142 ページ: 18990, 18996
10.1021/jacs.0c10337