研究課題/領域番号 |
20K15730
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
張 志寛 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60866937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 炎症性腸疾患 / NOD2 / NOD-like receptor / クライオ電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患は指定難病の一種であり、世界中の患者数が年々増加傾向である。炎症性腸疾患の病因タンパク質と言われているNOD2の活性化機構および活性制御機構は解明されておらず、炎症性腸疾患の発症の分子機構の理解およびNOD2を標的とする治療方法の開発が困難とされている。本研究ではクライオ電顕構造解析によるNOD2の構造解析を通じて、NOD2の活性化機構および活性制御機構の解明を目指し、炎症性腸疾患の新しい治療方法の分子基盤を提供したい。 今年度では、NOD2/nanodisc複合体の試料調製およびNOD2の新規リガンドの探索を中心的に行った。NOD2と酸性脂質から構成される脂質二重膜に局在し機能している。この脂質結合状態のNOD2をクライオ電顕構造解析するために、NOD2と酸性脂質を含んだnanodiscとの複合体を用いてNOD2の脂質結合型試料を再構成した。より均一かつ安定したNOD2/nanodisc複合体を得るため、クロスリンクによる試料調製法を確立した。現在、上記試料を用いたクライオ電顕によるNOD2/nanodisc複合体の構造解析を試みている。また、NOD2が酸性脂質と結合する性質があり、これをきっかけに、NOD2と様々な酸性電荷を持つPAMPs/DAMPsとの結合を確認した。その結果、NOD2と強く結合する新規リガンドを見出した。現在、クライオ電顕によるNOD2/新規リガンドとの構造解析を行い、リガンド由来の電子密度が確認された。今後、新規リガンドの認識機構を解明するため、より高分解能のクライオ電顕マップを目指す。 一方、当初計画していなかった炎症性腸疾患と深く関連しているもう一つのタンパク質因子・NLRP1の構造解析も行っている。NLRP1は病原体由来のプロテアーゼの切断やdsRNAなどのPAMPsにより活性化されると報告されているが、詳細な活性化機構の分子基盤は不明である。今年度では、クライオ電顕によるNLRP1の高分解能構造解析に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. クロスリンクにより安定化されたNOD2/Nanodisc複合体の調製方法を確立し、クライオ電顕のスクリニング撮影を行った。 2. NOD2の新規リガンドを見出し、クライオ電顕によるリガンドの認識機構の可視化に進展した。 3. 炎症性腸疾患と深く関係する別のタンパク質因子であるNLRP1の高分解能のクライオ電顕マップを得た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きクライオ電顕構造解析によるNOD2の活性化機構および活性制御機構を解明することに注力する。また、炎症性腸疾患の関連因子のNLRP1の構造解明を目指す。
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