研究実績の概要 |
本研究ではVemPの翻訳アレストを介した遺伝子発現制御における転写産物の振る舞いに焦点を当てて研究を行ってきた。R4年度では前年度に引き続き翻訳アレストを介した発現制御機構における「転写」と「翻訳」の連関に着目し研究を展開した。これまでの研究により、vemP-secDF2領域が転写される際、長さの異なる二種類の転写産物(長鎖産物;L, 短鎖産物; S)が蓄積することを見出している。前者はvemP-secDF2全長の転写産物であり、VemPの分泌能が損なわれ翻訳アレストが安定化する時、secDF2領域がRNaeseEの分解から保護され生じる。一方で、S産物はvemPとvemP ,secDF2間の遺伝子間領域の一部を有しているがその産生機構は明らかとなっていない。S産物の産生機構は①転写終結によるものと②エンドヌクレアーゼによる分解が考えられた。これらを検証するためにまず、vemP-secDF2を3'末端からtruncationした変異体を用いてS産物の産生に与える影響を確認した。その結果、S産物産生にかかわる領域が遺伝子間領域に存在することが明らかとなった。また、ヌクレアーゼによる分解の有無をin vitro転写系を用いた実験系により検証したところS産物様の転写産物が確認された。このことから、S産物は遺伝子間領域のモチーフ依存的かつヌクレアーゼ非依存的に産生されることが示唆され、転写終結により生じることが推測された。
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