本研究では、輸送ゲートの開閉機構およびエネルギー変換機構を原子レベルで解明するため、最も本質的な部分を担う輸送ゲート蛋白質FlhAおよびFlhBに焦点を合わせ、遺伝学・生化学的機能解析、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡による構造解析を実施する。本年度の主な成果は以下に示す。 1.FlhBは、ATPaseであるFliIの助けにより、輸送ゲートが開閉することが示唆された。さらに、FlhBのC末天然変性領域が膜電位依存的なゲートの開閉に重要であることが示唆された。 2.輸送シャペロンとFlhAの相互作用により、輸送ゲートは膜電位を動力源に利用して輸送基質蛋白質をアンフォールドしながら輸送チャネル内へ送り出すことが明らかとなった。輸送ゲートがべん毛輸送基質蛋白質を輸送チャネル内に送り出すと、FlhAのC末細胞質ドメインが開いた構造から閉じた構造へスイッチし、その結果フリーとなった輸送シャペロンやFliJが輸送ゲートから解離することが示唆された。 3.輸送ゲート複合体を含む MSリング複合体の精製に成功するとともに、クライオ電子顕微鏡により Mリング部分の高解像度の電子密度マップを所得することに成功した。現在、 Mリング部分を2.4Å分解能で原子モデルを構築中である。
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