研究課題/領域番号 |
20K15751
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
片山 将一 立命館大学, 薬学部, 助教 (60779049)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CDKL5 / プロテインキナーゼ / シグナル伝達 / P19胚性腫瘍細胞 |
研究実績の概要 |
Cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)はセリン/スレオニンアミノ酸残基をリン酸化するタンパク質リン酸化酵素である。CDKL5遺伝子の変異はてんかんや精神発達の遅れを伴う疾患を引き起こす。かつてこの疾患はMethyl-CpG2-binding protein 2を原因遺伝子とするレット症候群の亜型とみなされていたが、症状の違いなどから、最近ではCDKL5特有の疾患としてCDKL5欠損症と定められている。CDKL5遺伝子が変異し、CDKL5欠損症を発症するそのメカニズムを明らかにするためには、CDKL5をとりまくシグナル伝達経路を見出すことが必須の課題となる。しかしながら、これまでにCDKL5がリン酸化する基質やCDKL5の機能を制御するタンパク質の情報は非常に少ない。そこで、研究代表者は、CDKL5をリン酸化し機能調節を行うタンパク質リン酸化酵素を探索するため、タンパク質リン酸化酵素に対する阻害剤ライブラリーを使用し、CDKL5をリン酸化するタンパク質リン酸化酵素としてKinaseXを見出している。さらにKinaseXによってリン酸化されるCDKL5のアミノ酸残基について解析を行ったところ、KinaseXはCDKL5のC末端領域に存在する複数のアミノ酸残基をリン酸化することが明らかになった。加えて、神経分化のモデル細胞であるP19胚性腫瘍細胞を用いて、CDKL5のリン酸化レベルが神経分化過程において大きく変動することも見出している。さらに、CDKL5のリン酸化レベルが変動することの意義を調べるための予備実験として、神経分化過程におけるCDKL5の役割について解析を行ったところ、CDKL5が細胞死の制御を行うことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KinaseXによってリン酸化されるCDKL5のアミノ酸残基の決定はLC-MS/MS解析やCDKL5点変異体を用いた解析によりスムーズに行うことができた。また、CDKL5が神経分化過程において細胞死を制御することを見出したことは、今後CDKL5のリン酸化について解析を行う上でよい指標となりうる。これらの点から研究は順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CDKL5のリン酸化部位変異体を用いて、細胞死の制御が見られるかを解析する。具体的には、これまでに見出したCDKL5のkinaseXによってリン酸化されるアミノ酸を、それぞれリン酸化されないアミノ酸であるAlaもしくはリン酸化を模したアミノ酸であるAspおよびGluに置換したCDKL5点変異体を作製し、その後、各変異体を発現するP19細胞株を作製する。これらの変異体のうち細胞死に変化が見られるものを探索する。細胞死に変化が見られる変異体を同定できた場合には、その変異がCDKL5の機能(触媒活性・細胞内局在など)に及ぼす影響を解析する。また、現在までの内容について、国際学術誌への投稿を行う予定である。
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