Cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)はセリン/スレオニンアミノ酸残基をリン酸化するタンパク質リン酸化酵素である。CDKL5遺伝子の変異は出生後早期よりてんかん発作を伴う精神・神経疾患を発症させる。かつてこの疾患はMethyl-CpG2-binding protein 2を原因遺伝子とするレット症候群の亜型と認識されていたが、最近ではCDKL5特有の疾患としてCDKL5欠損症とその名称を改められている。CDKL5遺伝子が変異し、CDKL5欠損症を発症させるその分子機序の解明には、CDKL5がどのような分子と相互作用することでシグナル伝達に関与するかを明らかにすることが必須の課題となる。しかしながら、CDKL5がリン酸化する基質やCDKL5の機能を制御するタンパク質の情報はほとんど明らかにされていない。これまでに研究代表者は、CDKL5のリン酸化状態がP19胚性腫瘍細胞の神経細胞分化過程で大きく変動する事を見出している。このことを手掛かりに、CDKL5が受けるリン酸化の責任キナーゼを阻害剤ライブラリーによって探索したところ、KinaseXを同定することに成功した。さらにKinaseXによってCDKL5がリン酸化されることの意義について解析をおこなうため、リン酸化されるCDKL5のアミノ酸残基の同定を試みたところ、KinaseXはCDKL5のC末端領域に存在する複数のアミノ酸残基をリン酸化することが明らかになった。また、CDKL5の神経細胞分化時における役割についてノックアウト細胞株を樹立し解析を行った。加えて、細胞内におけるCDKL5のリン酸化がその酵素活性に与える影響を解析するため、簡便なCDKL5の酵素活性検出法の開発にも取り組んだ。
|