研究実績の概要 |
(1)K48結合型ダイユビキチンの構造ゆらぎと翻訳後修飾の相関 タンパク質分解に関与するK48結合型ダイユビキチンに対して、NMRを用いた温度依存的水素核化学シフト変化解析をおこなったところ、二重合体界面だけでなく、界面から離れた構造部位においても、ナノ秒からマイクロ秒の構造ゆらぎがあることが観測された。二重合界面の構造ゆらぎは、二つのユビキチン分子が開閉運動をする際に生じるナノ秒からマイクロ秒の速い揺らぎに起因することが、低温下における窒素核横緩和分散測定によって特定することができた。界面から離れた構造部位における構造ゆらぎは、リン酸化をはじめとする翻訳後修飾反応に対する受動性に関与することが示唆された。得られた結果をまとめ、学術論文として発表した。研究内容が学術雑誌の表紙(カバーアート)に選ばれた(Morimoto, et al. Biochemistry 2021, 60, 573-583)。 (2)遊離非定型ユビキチン鎖の作製と物性の評価 長いユビキチン鎖はオートファジー因子p62と液滴を形成し、タンパク質分解を誘導すると報告されている(Sun, et al. Cell Research 2018, 28, 4, 405-415)。本研究ではユビキチン鎖が関与する液液相分離を詳細に解明するために、さまざまなユビキチン鎖を作製し、液滴形成能を検証することを目指している。特に、酵素反応で作製が困難な結合型のユビキチン鎖や分岐鎖を、有機化学的な手法を用いて大量に試料調製をおこなう手法を開発した。
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