本研究では、1分子レベルでクロマチン構造の再構成実験系を開発する。2022年度では、1分子レベルでのクロマチン再構成実験を実施した。4種類のコアヒストンとクロマチン形成因子NAP-1やATP要求性クロマチンリモデリング因子を用いて、試験管内でバクテリオファージラムダDNAに対してクロマチン構造を再構成した。ガラス表面上にに正電荷を帯びたアミノシラン処理ガラスを用いることによる分子コーミング法によって、DNAを伸長させることでクロマチン形成評価を形態学的に捉える方法を実施した。クロマチン非形成条件下では、伸長した長さ16マイクロメートル程度の直線上のバクテリオファージラムダDNAの形態が観察された一方で、クロマチン形成条件下では、長さ3マイクロメートル程度の輝点の形態が観察された。1分子レベルでのクロマチン形成でDNAはコンパクトに折り畳まれたことが示されたが、コンパクトに折り畳まれたクロマチン形成DNAを形態的に捉えるためには光ピンセット装置などによる物理的な伸長操作が必要という課題が見つかった。今後は光ピンセット装置を用いてクロマチン形成DNAの動的解析を実施していく予定である。 またヒストンタンパク質のDNA結合性利用の応用として、異なる4つの古細菌由来のヒストン様タンパク質に着目した。ヒストン様タンパク質と蛍光タンパク質とを融合した2本鎖DNA蛍光タンパク質を開発し、1分子レベルでの蛍光イメージングを実施した結果、全ての2本鎖DNA蛍光タンパク質でDNA1分子イメージングに成功した。2本鎖DNA蛍光標識タンパク質は、DNA結合親和性が高いこと、1分子のDNAや細胞核の蛍光イメージングが可能であることから、化合物ベースで、変異原性を持つ核酸染色試薬の代替品となり得ることが示された。
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