研究課題/領域番号 |
20K15761
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
山中 龍 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (90795436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞老化 / マグネシウムイオン / 蛍光イメージング / 間葉系幹細胞 / 生物物理 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞老化の進行における細胞内マグネシウムイオン動態のメカニズムとその役割を解明することを目的として、細胞老化モデルとして間葉系幹細胞を対象として、蛍光イメージング法による解析を行なっている。本年度は主に、以下に記す3点の研究成果を得ることができた。 (1)細胞老化の進行に応じてどのように細胞内マグネシウムイオン濃度は変化するのかを解明することを目的として、間葉系幹細胞を用いた細胞老化モデルを構築し、細胞内マグネシウムイオンのイメージング系の構築を行なった。そして、長期にわたる継続培養(約3ヶ月以上)における細胞内マグネシウムイオン濃度の経時的変化を蛍光イメージング法によって取得した。 (2)細胞老化に伴う細胞内マグネシウムイオン濃度変化を解明するために、まず細胞老化レベルの定量化指標の構築を行なった。具体的には、位相差顕微鏡を用いた非染色イメージング画像から細胞老化の進行レベルを定量化する画像解析手法の構築を行なった。その結果、高い精度(相関係数R=0.94)で細胞老化レベルを推定する画像解析モデルの構築に成功した。 (3)細胞内マグネシウムイオン濃度の制御を介して細胞老化を遅延させることが可能かどうかを明らかにすることを目的として、細胞内マグネシウムイオン恒常性に人為的な介入を加えたときの細胞老化の進行に対する影響を解析した。その結果、マグネシウムイオン恒常性の人為的介入は細胞老化の進行に影響を与えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)マグネシウムイオンが間葉系幹細胞における細胞老化の進行に与える影響を定量的に解析することを目的として、細胞内マグネシウムイオン恒常生が細胞増殖に与える影響を長期(3ヶ月以上)にわたって経時的に観察した。その結果、当初の予想通りマグネシウムイオンが細胞老化の進行に与えることを明らかにした。(2)また並行して、間葉系幹細胞の老化レベルを定量的に評価することを目的とした、新規の画像解析手法の構築も実施した。これにより、位相差顕微鏡による非染色のイメージング画像から細胞老化レベルを定量的に測定することが可能となった。コロナ禍により実験室でのウェット実験が制限を受けたため、細胞老化とマグネシウムイオンの関係についての分子レベルの解明は当初の予定通り進んでいるわけではないが、一方でコンピュータによる画像解析系の構築が大きく進んだ。加えて、得られた実験結果が当初の想定通りであったことより、計画全体としては「おおむね順調に進展している。」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、細胞老化の進行にともなう細胞内マグネシウムイオン濃度の経時的変化を捉えたデータ取得を完了している。今後はそれらのデータの詳細な解析を行なっていく予定である。加えて、これまでの研究で構築した画像解析系を用いてマグネシウムイオンが細胞老化の進行に与える影響を定量的に解析し、マグネシウムイオンが細胞老化に影響を与えるメカニズムを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により実験室での研究遂行が制限されたため、研究計画の一部変更によって研究費の支出時期の入れ替えを行なった。 次年度において、2020年度に行う予定であった実験を実施するため、必要物品の購入を行なう予定である。
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