研究課題
ニューラルネットワークによる深層学習を中心とした人工知能技術は、ある程度の判断根拠の可視化を可能とするものの、基本的に、入力と出力の間のブラックボックスとして機能する。代表者は、人工知能技術を活用して、研究の学習や発見を効率化しつつ、学習や発見が出来た後は、人工知能技術由来のブラックボックスを抱え込まないで済む人工知能技術の使い方を「学習させる人工知能(AIL: Artificial intelligence to learn)」と命名し、本研究のデータ解析に適用した。その結果、入力を実験データ、出力をデータに潜むと推定した数式とする、深層学習型シンボリック回帰によって、代表者が発見した、心筋細胞を温めると細胞内部のサルコメア(筋節)が収縮と弛緩を繰り返す熱筋節振動(HSOs; Hyperthermal Sarcomeric Oscillations)状態になる現象に関して、個々のサルコメアが概位相同期カオス振動子になっていることを発見した。HSOsは、一定の振動周期を保ちつつ、細胞内のカルシウム濃度変化の影響を受けて振動振幅や隣接サルコメア間の位相同期状態をカオス的に変化させていた。すなわち、温められた心筋サルコメアは安定性と不安定性を併せ持った収縮リズムを刻むことを明らかにした。2020年度に発表した数理モデルから、カオス的な不安定性がミオシン分子1個にかかる力を一定にして安定性を生み出すと予想している。本成果はAILによる、見落としを抑止し、効率的な研究発見を可能にした成果の実例であると共に、サルコメア内の分子動態に関する具体的な仮説でもある。また、顕微ラマン分光計測とUMAP法による非線形次元圧縮による複合解析で、正常マウスと糖尿病モデルマウスの血液のラマン分光スペクトルを明確に区別できることの確認にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
人工知能技術由来のブラックボックスを抱え込まないで済む人工知能技術の使い方、「学習させる人工知能(AIL: Artificial intelligence to learn)」の活用によって、筋節内ミオシン動態を推定するために重要な現象(心筋細胞を温めると、振幅のカオス的不安定性と周期の恒常性的安定性を併せ持った収縮リズムが生じる)の発見と、その数理モデル予想を得ることに成功した。また、顕微ラマン分光計測により、正常マウスと糖尿病モデルマウスの血液を明確に区別できることも確認した。
引き続き研究計画通りに研究を進める。そして、研究成果の論文・学会発表を継続する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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